豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2001年07月01日 |
豊田 尚吾
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
CELレポート (Vol.10) |
西部(2000c)の「地域通貨とは、一定の地域やコミュニティの参加者が財やサービスを自発的に交換しあうためのシステム、あるいはそこで流通する貨幣の総称」は最大公約数的な定義の一つである。これでは抽象的でわかりにくい。議論を発展させるため、厳密性や網羅性を犠牲にして、地域通貨制度の一般的な姿を概観すれば、まず、地域通貨制度導入の目的は大きく2つに分けられる。第一は地域経済の安定、活性化であり、第二は互恵的コミュニティの再構築である。それらを達成するための手段がそれぞれ存在する。地域経済の安定、活性化という第一の目的に対応する手段としては、?購買力の域外流出防止(域内限定利用)、?交換取引促進(?.ゼロまたはマイナス金利、?.予算制約緩和、?.ボランタリー経済の取引)がある。互恵的コミュニティの再構築という目的に対応する手段には?非匿名性取引(市場取引でなく相対取引)?ボランタリー経済の取引を通じた交流促進がある。それらを現実的なものとする制度には、特定地域内、メンバー限定など、流通範囲が制限されていること、金利がゼロまたはマイナスであること、貸借・信用創造は行わないこと、地域通貨発行権限が個人やNPO組織に委ねられていること、ボランタリー経済を取引対象に含めていること、相対取引が基本であること、などがある。
実際の取引例として、LETS、イサカアワーズを紹介するが、同じ地域通貨制度でありながら、かなり異なる性質を持っていることが確認できる。両者は、地域通貨導入の目的が異なることはもちろんのこと、導入にいたる経緯、地域の風土などの影響を受け、独自の発展を遂げている。地域通貨制度の歴史を概観すると、古代から現在まで、様々な事象と関連づけることができるが、重要な点は、複数の視点、問題意識の中でそれが論じられているという事実である。複数の視点とは、第一に利子否定という視点、第二に相互扶助的性格を重視する視点、第三に価値の多様化という視点、第四に交換取引促進の視点、第五に地域内流通従姉の視点、最後にコミュニティの再構築という視点である。このように、地域通貨制度は、一本の道をたどってきたわけではなく、多くの道が合流した結果として現在の姿がある。