前市岡 楽正
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
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2001年06月25日 |
前市岡 楽正
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エネルギー・環境 |
地球環境 |
CELレポート (Vol.10) |
著者は著名な財政学者で政府税調など多くの委員を務める税の専門家。「環境税という言葉は、環境問題に関心を持つ人々には、かなり広まってきている。しかしながら、その正確な概念、租税としての基本的な性格、経済効果、環境政策としての位置付けなど、具体的な内容となると必ずしも明確になっていない。本書はかかる点を踏まえ、そもそもの『環境税とは何か』を、体系的に考察することを狙いとしている」。
第1 章は、環境問題の変質(産業公害から地球環境問題へ)と温暖化問題に対する世界と日本の取り組みを概観している。第2 章では、これまでの環境政策の中心であった直接規制と補助金の問題点、企業と家計の自主的取り組みの限界が指摘される。第3 章では、各種の経済的手段(環境税や排出権取引など)が比較検討された後、環境税の諸類型が紹介される。第4 章「環境税のデザイン」と第5 章「環境税の経済効果と今後の課題」は本書の中心をなす。ここでは代表的な環境税である炭素税をめぐる重要な論点が簡潔に解説されていく。?新税の導入か既存税制の環境税化か、?税収の性質と使途、?行政費用、?税の逆進性、?課税ベースと課税段階、?経済への影響、?国際競争力への影響――など。併せて、諸外国の事例や環境税に対する国内の意識も紹介されている。
本書は基本的には解説書であるが、著者の主張も散見される。「揮発油税をはじめとした6 つもの租税を、道路特定財源いわゆる目的税にしているのは、今日世界中で日本ぐらいなものである。…この制度開設以来、半世紀近くも経過する今日、すくなくともその一部を道路建設のみに振り向けるのではなく、環境目的のため炭素税に転換することを政策的にそろそろ考えるべき時期であろう」「石油関連諸税の一部を炭素税に転換させると共に、新税としてガソリンに負担を課する炭素税導入も、国際的に見れば十分に考え得るといってもよいだろう」「おそらく各国とも、所定の(京都議定書で設定された――引用者)CO2削減目標の達成を真剣に考えたとき、今後経済的手段のうち、税制の活用とりわけ炭素税の導入の是非に、視野を広げざるを得ないであろう」など。