栗本 智代
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
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2001年03月20日 |
栗本 智代
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
その他 |
大阪都市協会冊子 |
「社会に役に立つことであればいい、自分が問題意識をもったテーマを設定して研究し、人脈を広げ、同時にコーデイネイト力もつけなさい」。10年程前、私が現在の研究所へ異動してきた折、上司にこう言われた。研究員一人一人が自立して社会と接点を持ちつつ、所員同士はゆるやかにつながり情報共有しながら切磋琢磨する。エネルギー・文化研究所は、当時ではかなり前衛的なネットワーク研究所であったように思う。
テーマを模索する中で、大阪のまちが持つ潜在的な魅力に心ひかれ、それが今日活かしきれていないことに対して問題意識を持つようになった。大阪の土地性や人の営みが、独自の賑わいや芸能に直接反映されてきた“都市の歩み”さえ、ほとんど知られていない。「大阪に少しでも伝承力をつけたい」「まち物語を掘り起こしてわかりやすく楽しく語れる大阪人を育てたい」。こうして「なにわの語りべ」養成のための旗揚げ公演を行ったところ、行政の担当者の共感・協力を得て、市内の生涯学習センターで養成講座が実現した。その結果、約百名の卒業生のうち有志が定期的に集まり、新規メンバーも加えながら「語りべの会」として勉強会を継続させている。今では、地域の祭り・イベントで発表するなど、地道だが確実に活動の領域を広げており、時々新聞にも紹介されるほどになった。
大阪の歴史や資源を見直し、今生きている人が楽しめるような発信ができないかと、観光ガイドボランテイア育成のための手法やツールづくり等行政のお手伝いをしていた時期があるが、その延長上で「大人のための大阪ガイドブック」を作成したいと考えた。当初から一緒に活動してきた仲間、知人の紹介...等々で、有能な編集者、理解ある出版社にめぐり合い、著名な先生方にも編集の相談にのってもらった。その結果、32名の研究者が各専門分野からわかりやすく大阪を語るという、大人数の共著「大阪まち物語」(創元社発行)の出版が実現した。おかげさまで、大変好評をいただいている。