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豊田 尚吾

2001年02月01日

株主価値経営の意義と課題

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2001年02月01日

豊田 尚吾

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関西学院大学「ミクロファイナンス」レポート

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1.株主価値経営の理念

株主価値経営とは、企業価値最大化が企業の最終的な目的であり、それは結局株主価値の最大化に帰結するとの考え方のもと、企業を経営することである。株主価値経営では、企業価値は株式の価値と負債の価値の合計と考える。そこで株主と負債の債権者を比較すれば、?会社法によって、企業の所有権者が株主と規定されている、?負債の価値は金利水準に影響を受けるが、株式と比べて変化幅が少なく、金利は経営者にとって外生変数である。これらのことから、経営者にとって、企業価値の最大化はほぼ株式価値を最大化することに等しい。一言で言えば、企業価値最大化≒株主価値最大化=株価最大化である。

以下、本節では、株主価値経営の理念を支える基本的態度を明らかにした上で、3つの特徴を論ずる。株主価値経営がとる基本的態度とは、徹底的に「資本」の立場に立って考えることである。はじめに「企業価値=株式の価値+負債の価値」と述べたが、これは企業を資本の固まりと捉え、ひとつの「資産」として見ていることを意味する1。そしてその資産にどれだけの貨幣価値(値段)があるかを問題とする。そこでは、企業という資産が生み出す価値を受け取る権利(財産権)は、債権者と株主のみにあるという考え方が基本にある。言い換えれば、企業が生み出す価値とは、獲得した収益から原材料費の他に「人件費」を控除したものであり、あくまで「資本」の取り分(のみ)を考察の対象においているということである。

このように資本の論理が基本にあることを前提とした上で、株主価値経営の第一の特徴を言えば、それは株主資本コストの概念を提示したことである。株主価値経営においては、企業の生み出す「付加価値」とは何かという考え方が従来と異なる。付加価値とは「アウトプット−インプット」である。一般に経済学的な理解では、インプットとは原材料費などを指し、付加価値は(経済用語としての)「利子と賃金」である。そしてそれらは資本と労働に還元されると考える。しかし株主価値経営では賃金はもちろんのこと、(賃金を控除した残りは会計的にいえば営業利益にあたる)、負債に対する利子としての資本コスト(これを控除すれば経常利益)、さらには株主の要求するリターンも「株主資本コスト」という費用であると考える。それらを全て控除してなお残ったものこそが、企業の生み出す付加価値と定義するのである。

 

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