豊田 尚吾
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2000年02月26日 |
豊田 尚吾
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
新聞・雑誌・書籍 |
読売新聞「論壇」2000年2月26日 |
新しい公の創出とは
2 1 世紀を前に金融不安が一段落し、I T を中心とする技術革新への期待が膨らむにつれて、日本でも前向きの提言、ビジョンなどが散見されるようになった。そのような中、小渕首相の私的諮問機関である「2 1 世紀日本の構想」懇談会( 河合隼雄座長) が、1 月に「日本のフロンティアは日本の中にある」という報告書をまとめた。しなやかでたくましく自立した個の確立が第一に求められ、彼らが自発的に社会に参画し、成熟した協治( ガバナンス) を築くことで新しい公が創出されると主張する。国の志について議論を起こすためのたたき台としては刺激的であるが、格調が高すぎてわかりにくい。
高尚な議論を建設的なものにするには、抽象論だけでなく、何か具体的な手がかりが必要である。本稿では昨年実施され、種々の理由で厳しく評価された「地域振興券」政策の再検討を通して「新しい公の創出」を考える。なぜなら地域振興券政策は、見方によっては公という概念を発展させる身近な教材になると考えるからである。
昨年実施された地域振興券政策は、6 0 0 0 億円以上の国費を費やして商品券を配布するという、世界でも例を見ない「景気対策」であった。周知の通り、この施策は同額の減税並の効果しかなく、地域経済への貢献も大きくなかったと評価されている。地域振興券政策の経済効果に関しては、政治的な導入経緯も含め、多くの問題点が既に論じられてきたのでここでは繰り返さない。論ずるべきなのは広い意味での地域振興である。地域振興には、経済の活性化だけではなく、コミュニティの再生や環境と共生する街づくりなど、様々な取り組みかたがある。街興しもその一つである。