前市岡 楽正
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
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1999年06月20日 |
前市岡 楽正
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エネルギー・環境 |
地球環境 |
CELレポート (Vol.2) |
【要旨】
・地球温暖化の主因である二酸化炭素の大気中濃度を安定化させるためには、早晩、排出量を最低限、現在の半分以下に抑制する必要がある。排出削減に取り組む時期が早ければ早いほど低い濃度での安定化が可能となる。どのレベルでの安定化を目指すかは、科学の問題である以上に、合意形成の問題である。合意形成のためには、南北間の公平性と世代間の公平性の2つが中心的な重要性を持つ。
・南北間の合意が困難なのは両者間に大きな格差が存在するからである。すなわち、経済と人口において成熟している先進国は、温暖化に大きな責任を負うとともに、温暖化の直接的影響は比較的少ない。他方、その両面で未成熟な途上国は、これまでのところ温暖化への責任はほとんどないにもかかわらず、将来大きな影響を受けると見られる。しかしながら、放置されれば、途上国の排出量は今後急速に増加して、やがて先進国を上回る。
・南北協調は必要かつ正当であるが、その現状はきわめて不十分である。COP3で決まった排出削減目標には様々な欠陥があるうえ、途上国参加問題は進展していない。
・将来の排出権について長期的な配分原理が必要である。配分原理として、一人当たり平等な排出という基準(平等基準)を支持する。《平等基準への漸進》が唯一の現実的な道だと思われる。
・効率の悪い途上国でまず排出削減を行うべきであるという議論や、途上国から先進国への排出権の移転問題は、二義的だと思われる。