豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
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1999年04月01日 |
豊田 尚吾
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エネルギー・環境 |
環境対応 |
CELレポート (Vol.1) |
要約
・ COPにおける気候変動枠組条約の柔軟性措置の一つである、排出権取引を取り上げ考察する。排出権取引には、議論すべき課題が多く残されている。理論的には、時間をまたいだ取引、不完全競争下での排出権取引制度の有効性、他の政策との整合性、権利割当の問題などがあり、制度面では、排出権そのものの具体的内容、市場整備、管理方法などについての国際ルール、初期割当に関する国内ルール、政治的問題などがある。
・ 本稿では、その中でも排出権の、時間をまたいだ取引の問題について取り上げる。具体的には、バンキング(当期、排出権を使わず、時期以降に使用を繰り越す)、ボローイング(次期以降の排出権を前借りして使用し、後で節約する)などの制度が取り入れられた場合の、企業が直面する制約条件の変化を考察する。
・ 結論は以下の通り。企業の直面するリスクは、どのような先物取引が実現するかに依存する。フォワードなどの取引が円滑に行えれば、ヘッジのコストは抑えられるものの、ロール・オーバーなどの手法によって、価格を固定化し、リスク回避を行おうとすれば排出権取引市場のあり方によって、そのコストは変化することになる。場合によっては、市場参入や取引の規制、時間をまたいだ取引自体の限定的導入などが考慮の対象になる。