平山 健次郎
1999年03月15日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
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備考 |
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1999年03月15日 |
平山 健次郎 |
エネルギー・環境 |
環境対応 |
新聞・雑誌・書籍 |
清文社刊 平成11年3月15日発行 NPO研究フォーラム著 2001/6まで研究員 |
1998年夏のある夜に、親子向けの「セミの羽化観察会」に参加したときのことである。子どもは小学校低学年、親は三〇代が多い。スタッフを含めて約四〇人が、すっかり暗くなった自然公園に集まった。公園の奥の普段は立ち入ることのない林に、ぞろぞろと足を踏み入れていった。懐中電灯を手に、セミを探した。抜け殻はすぐにいくつも見つかるが、目当ての羽化をしているセミはなかなか見つからない。
「あっ、見つけた」女の子が声を弾ませる。子どもも大人も集まった。暗がりの中でセミが静かに青い羽根をのばしている。普段はファミコンゲームに夢中の子どもたちが、懐中電灯を一生懸命照らしている。
天敵である鳥が寝ている夜の間に羽化が行われることを、枝からぶらさがって青い羽をそっとのばしているセミの姿を見ながら、子どもたちは実感を伴って教えられる。やっと羽化を終えたセミは、その後せいぜい二週間しか生きられないことも、彼らは知らされる。「がんばれ」小声で声援を送る子がいる。
たった一度の観察会に出たくらいで、セミの生態に詳しくなるわけでも、生命の大切さを知ることができるわけでもないだろう。しかしその夜参加した親子は、大切なひとときを共にしたのだ。羽化しているセミを邪魔する子どもはひとりもいなかった。みんな静かに真剣に見守っていた。
環境分野におけるインパクトアナリシス(注1)では、「財団法人 日本野鳥の会」と「社団法人 大阪自然環境保全協会」を主な調査対象とした。冒頭の「セミの羽化観察会」は「大阪自然環境保全協会」が主催したものである。注1:ここでは「NPOによる社会への影響力の調査」を指す。
「日本野鳥の会」は、今活動している環境分野のNPOの中で最も設立が古く、最も会員数が多く、知名度も高い、この分野を代表する団体である。また「大阪自然環境保全協会」は、地域を拠点として自然保護を具体的かつ積極的に行い、成果をあげている団体である。日本の環境非営利団体は地域に根ざした比較的小さなものが多いが、当協会はその典型的な例である。