前市岡 楽正
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1997年08月05日 |
前市岡 楽正
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住まい・生活 |
その他 |
WEB |
東洋経済・高橋亀吉賞受賞(佳作) |
1. 人口の高齢化
高齢化とは、総人口において高齢者の占める割合が増大することをいう。人口が高齢化しつつある社会を高齢化社会(aging society )といい、高齢者人口の割合が増大しつくして落ちついた社会を高齢社会(aged society)という。日本の場合、65 歳以上人口の割合が持続的に上昇しはじめた1955 年頃が、高齢化の始期とみられる。厚生省の将来推計(1997 年推計)によれば、この比率は2030 年頃に28%程度となる。それ以降は、一時的には上昇するものの、ほぼこの水準で安定するとみられる。したがって、高齢社会の到来は、2030 年頃ということになる。
高齢社会の到来に関して、押さえておくべき点の第1は、その<普遍性>である。高齢化の始期やスピードは国により様々であるが、いわゆる先進国のすべてが高齢化を経験しつつある。また、現在のところまだ「若い」発展途上地域においても、今後徐々に高齢化が進展すると予測されている。日本の高齢化の特徴として「世界最高の速度と水準」がよく強調され、それが高齢社会悲観論の一つの根拠になっている。しかし、速度についていえば、中国が日本の高齢化のスピードを上回りそうだと予測されている。遅れて産業化の始まった国の経済成長率が先進国よりも高いことが不思議でないのと同様、遅れて高齢化が始まった国々の高齢化のスピードが、先進諸国よりも速いとしても驚くべきことではない。将来の高齢化の水準(65 歳以上人口比率)についても、推計時期や前提によって将来値が変わってくることを考慮するなら、日本が例外的に高いとまではいえない(例えば、UN,The Sex and Age Distribution of World Population:1994 を参照)。日本の例外性ではなく、普遍性に着目すべきであろう。
第2のポイントは、高齢社会の<必然性>である。人口高齢化が普遍的であるのは、その原因が普遍的だからである。社会の産業化がそれである。産業化に伴って、まず死亡率が低下し、少し遅れて出生率が低下する。すなわち、周知のとおり、死亡率と出生率は、 高出生率・高死亡率⇒高出生率・低死亡率⇒低出生率・低死亡率という経過を辿る。それに対応して、総人口およびその年齢構成は変動するが、年齢構成の変動の一局面が高齢化である。