濱 惠介
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2007年08月17日 |
濱 惠介
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
WEB |
日経BP・ECO JAPAN連載コラム(5) |
かつて日本住宅公団に私と同期に入社した塚本正司さんが、『私たちは本当に自然が好きか』(鹿島出版会)という本を上梓しました。自然、特に「みどり」を我々がどのようにとらえ扱ってきたか、望ましい「みどり」との関係は何か、など、持ち前の研究心と粘り強さで探求した思索の書です。今回、この稿をさらりと書き上げられなかったのは、この本の印象が深く残っていたからかもしれません。
我々が暮らしている場所は、遠く時代を遡れば人の手の入らない自然の空間、つまり湿地や森だったはずです。人間はそこを開発し農地に変え家を建て、その集積が集落に、さらには都市になりました。他の生物の棲家を奪って広大な土地を占拠している訳です。なぜ一旦追い払った自然〜緑を、我々はまた必要とするのでしょうか。
人間とは身勝手なもので、利益になり都合の良いものには欲深く、直接役に立たないものは遠ざけたり価値を無視したりします。今回のテーマの「緑」や土も気まぐれな扱いを受けてきました。せっかく植えた街路樹を毎年丸坊主にするのは、その一例。
都心での生活では、「緑」との関係が希薄となり、高層住宅に至っては、住まいの周りの自然的要素がほとんど失われてしまいました。わずかな外部空間のバルコニーは、強風と乾燥で植物にとって過酷な環境です。人間の暮らしに「緑」やそれを支える土が身近になくても、本当に問題ないのでしょうか?
環境問題との関係を考えながら、「緑」と土の役割を考えたいと思います。