濱 惠介
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2009年09月01日 |
濱 惠介
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エネルギー・環境 |
省エネルギー |
WEB |
日経BP社特設コーナー「High Ecology Low Carbon〜創エネ住宅の時代へ」内のコラム |
エコ住宅は新築でなくても実現できます。今住んでいる家、または中古住宅を購入して改修することでも実現できるのです。むしろ、既に建っている住宅を活用したほうが、資源の有効利用・廃棄物の削減という意味で、よりエコロジカルと言えます。
わが国の戸建て住宅は平均30年程度で取り壊されているそうです。時間がつくる建築の味わいが出る前にゴミになり、廃棄物処分場を埋めていきます。また、いつまでたっても街並みに風格が出ないなど、大きな社会的損失となっています。
住宅を建てるには、建材の製造、運搬、工事にエネルギーを消費します。取り壊しに際しても、廃棄物処理・リサイクルにエネルギーが必要です。短期間で建て替えるのは、温室効果ガスの排出増加にもつながっているのです。
今回は既築の改修・長寿命化によるエコ住宅づくりを考えます。
住まいの価値は、必ずしも時間の経過とともに減ってゆくわけではありません。劣化する部分がある一方、変わらない価値や逆に増進する価値もあるのです。たとえば部屋の広さや基本的な寸法は変わらない価値です。庭の植栽は成長と良い手入れで深みを増します。古民家の黒光りのする柱や風合いの出た煉瓦(れんが)、苔(こけ)むした石などは、明らかに時間がつくり出した味です。家電製品や自動車の新品・中古とは意味が違うのです。
時間を経たものの価値は、古民家や文化財など特殊なものだけにあるわけではなく、身近な住宅と生活財にも言えることです。その意味は、モノが古びて味が出るとともに、慣れ親しんだ空間配置、使い勝手の分かった建具や収納、さらには、落ち着き・安心感など精神的な意味も含めて、長い間の繰り返しや試行錯誤の結果生まれた価値にあります。
住み続けてきた住宅ならば過去の履歴が分かっていますし、揮発性有機化合物による健康リスクもありません。中高年層にとっては、新築で家中すべてがまっさら、というのは不自然ですし、長年付き合った家具が落ち着かなく見えるでしょう。
既築住宅が持つもう一つの価値は、実際の空間や見え方を確かめられることで、設計図や模型で想像するのに比べて絶対的な強みです。目の前にある状態を出発点として改善策を考えるのですから、出来上がりを確実に予測できます。