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情報誌CEL

室崎 益輝

2010年01月08日

減災と安心まちづくり

作成年月日

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備考

2010年01月08日

室崎 益輝

都市・コミュニティ
住まい・生活

まちづくり
地域ガバナンス
ライフスタイル

情報誌CEL (Vol.91)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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阪神・淡路大震災によって、わが国の災害対策は「大きな転換」をはかることを余儀なくされた。その転換は、災害対策に戦略性や総合性あるいは持続性や内発性を要求するものであった。本稿では、大震災によって転換がはかられた防災の考え方をベースにして、その帰結としての「安心まちづくり」の方向性や課題について考えることにしたい。
―新しい防災の考え方―
大震災がもたらした災害対策の大きな転換は、「減災」と「危機管理」という2つの重要なキーワードによって説明することができる。
最初の減災という考え方の根底には、「大きな自然に対する小さな人間」という哲学がある。それは、巨大な自然の力を人間の力で完全に制圧することは不可能、というリアリズムに立つことを意味している。「不可能な被害ゼロ」をむやみやたらに追求するのでなく、自らの限界を知って少しでも被害を少なくしようとするのが、減災の基本だということができる。つまり、少しでも被害を軽減しようとすると、「対策の足し算による被害の引き算」が欠かせず、様々な対策を効果的に組み合わせることが必要となる。ところで、この足し算では、時間の足し算、人間の足し算、空間の足し算、さらには手立ての足し算がある。
最初の時間の足し算というのは、応急の対策だけではなく、事前の予防対策や事後の復旧対策にも力を入れて、被害の軽減をはかることをいう。次の人間の足し算というのは、様々な立場にいる人、様々な経験を持っている人が、それぞれの役割と力量に応じて協力しあうことをいう。ここでは、行政と市民の協働という足し算に加えて、事業所や学校、町内会やボランティア、各種団体やサークルなどが互いに協働するという足し算も忘れてならない。その次の空間の足し算は、幹線街路などの大きな公共空間の整備と路地裏等の小さな公共空間の整備を足し合わせることをいう。市街地の「皮」の部分だけでなく、「餡子」の部分の整備にも力を入れなければならない。最後の手立ての足し算では、ハードな対策とソフトな対策さらにはハートな対策の足し算が求められる。ハートな対策というのは、人間自身を災害に強くする対策で、防災のための意識啓発や教育が大切ということである。
次に、もう1つの重要なキーワードである危機管理についても触れておこう。危機という言葉には、防御の対象としての災害を幅広くとらえようとする意図が込められている。その防御の対象には、地震や洪水などの自然災害に加えて火災や危険物災害などの人為災害、さらには感染症や食中毒、犯罪やテロなどのリスクも含まれている。未知のリスクも含めて多様なリスクに横断的に備えようというのが、危機管理の1つの要点である。さてもう1つの要点は、管理という言葉から導きだされる。管理という言葉には、被害軽減という目 標実現のプロセスを科学的に追究しようとする意図が込められている。いままでの、他人任せの無責任な防災あるいはお題目だけのリアリティのない防災からの脱皮をはかることが、危機管理では強く意識されているといってよい。安全という達成の極めて困難な課題に戦略的に備えようとするのが、危機管理のもう1つの要点なのである。
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