情報誌CEL
地域交流で防災をネットワークする減災まちづくり
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
2010年01月08日
|
早稲田商店会 |
都市・コミュニティ
|
まちづくり
コミュニティ・デザイン
|
情報誌CEL
(Vol.91) |
|
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
午前10時、正門には人があふれ、大隈講堂の時計台が見守るキャンパスは老若男女でにぎわっている。早稲田大学の学生と地域住民が一体となって繰り広げる「早稲田地球感謝祭」は、年に一度の「まちの文化祭」。大学周辺の7つの商店会で構成される早稲田商店会が主催者となってキャンパスを借りきり、環境・防災・福祉・地域交流などをテーマに、多彩なブースや防災に関するシンポジウムなどを展開している。
第1回目の開催は96年夏。当初のテーマ“環境リサイクル”は、その後早稲田のまちづくりにおけるキーワードとして定着した。第1回目の開催から2年後、早稲田商店会は地域の拠点となる「エコステーション」を立ち上げる。その中核メンバーで、早稲田エコステーション代表研究員をつとめる藤村望洋氏は、商店のサービス券が当たるペットボトル回収機を開発。「エコステーション」に常設したところ、特典を求める人
が押し寄せたという。これをきっかけに環境への意識も高まり、住民同士のコミュニケーションを育んだ。まちの活性化に貢献したこの活動は話題を呼び、「エコステーション」は全国へと広がる。そのネットワークを“減災”にも生かそうと企画したのが「震災疎開パッケージ」である。
「震災疎開パッケージ」とは、自分のまちが災害に見舞われた際、提携している疎開先へ家族とともに避難できるというシステムで、全国に広がる受け入れ地は現在約20ヵ所。会員は年会費を払うが、災害が発生しない場合は疎開先の特産品が毎年もらえる。「早稲田地球感謝祭」に出展していた福島市も疎開先のひとつ。イベントに参加したのは、単に福島名物の焼鳥を提供するだけではなく、「地元の特産品を介した地域間交流」を実践するためでもある。
「人と人、地域と地域のコミュニケーションが災害から私たちを救う。イベントはそれを培う場所」と話す藤村氏は、交流の媒介となる“地元の特産品”を提携先から集め販売する「ぼうさい朝市」を企画。08年、大阪を皮切りに開催し、全国的な展開を見せている。
早稲田商店会が発信する、まちづくり、ネットワークづくりの発想から生まれた防災・減災活動は、重く捉えられがちなテーマをより親しみやすい内容に捉え直したもの。その基盤には、人と人とのつながりと、まちを愛する心意気がある。