日本雁を保護する会
2010年03月26日作成年月日 |
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2010年03月26日 |
日本雁を保護する会 |
エネルギー・環境 |
地域環境 |
情報誌CEL (Vol.92) |
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ひたひたと水を張った田んぼで、マガンが羽を休め、ハクチョウが餌をついばむ。水辺に渡り鳥が集うオアシスのような風景が、身を切る真冬の空気に潤いを与えている。
この「ふゆみずたんぼ」と呼ばれる冬期湛水水田は、宮城県北部にある伊豆沼・蕪栗沼周辺で見られる。稲刈り後の乾田に水を張ることで生きものの活動を促し、その生物多様性の力を活かした農法で、96年から実施されている。同地での取り組みは、一時は絶滅の危機に瀕したマガンの保護と深い関わりがあるという。宮城県栗原市に本拠を置く“日本雁を保護する会”の会長であり、「ふゆみずたんぼ」を提唱する呉地正行氏を訪ね、水田の形態や野鳥の動きを観察しながら、その関連性をうかがった。
冬の田んぼに水を張ると、稲株やワラが水中で分解されて微生物や藻が発生し、それを餌とする様々な生きものが集まる。「ハクチョウは餌場に、マガンは休息地として利用する」と、呉地会長。また、多量に繁殖したイトミミズが土の中の有機物を食べ、排出した糞が“トロトロ層”と呼ぶ天然の堆肥をつくる。抑草効果もあるこの土壌では、農薬や化学肥料を使わずに生産能力を上げることができる。このような農法は、実は江戸時代から行われており、1684(貞享元)年の「会津農書」にも記されている。いにしえの技術を「ふゆみずたんぼ」と名付け、現代に蘇らせた理由を呉地会長は、「冬の渡り鳥であるマガンはかつて日本全土で見られたが、環境の悪化、沼や湿地の干拓により飛来数と生息地が減少。ガン類の保護を目的に活動する当会が先頭に立ち、安全な越冬地を取り戻さなければと思った」と、振り返る。