アミタ株式会社
2010年03月26日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2010年03月26日 |
アミタ株式会社 |
エネルギー・環境 |
地域環境 |
情報誌CEL (Vol.92) |
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冬の夕暮れ、丘の下から静かに登ってくるのは一群の牛たち。ゆっくりとした歩みで搾乳場がある建物に近づいてくる。毎日、朝夕の2回、張った乳を搾ってもらいに自分たちで戻ってくるのだそうだ。
ここは栃木県の那須にある「森林ノ牧場」。その名の通り、起伏のある森林の中で乳牛が一年中24時間放牧されている。日本のほとんどの牧場では、乳牛は牛舎で飼われているが、ここ「森林ノ牧場」では、牛たちは自由に森林の中を歩き回っている。ジャージー種の牛は寒さに強く、雨の日でも雪の日でも外に出たまま。大きな瞳を輝かせ、人がいても驚いた様子を見せずに近づいてくる。そんな牛たちを見ていると、森林の空気も穏やかに感じられる。
しかし、この山や森林も以前は放置されていて、荒れ果てた状態だったという。
「牛が入ることで、森林の中の下草を食べてくれる。そして、地面がならされてくると、間伐などの作業がしやすくなり、光が差し込む森林にすることができる。森林の中での牧場の運営は、森林再生のひとつの実験でもあるのです」と、この牧場を運営する環境ビジネス企業、アミタ株式会社の内藤弘さんは説明する。
かつて薪炭林などとして利用されていた森林や里山は生物の多様性に富んだ場所だった。人が活用しながら保全することで、人の暮らしと自然との調和が保たれていたのである。その関係性が失われてしまった今、循環のモデルを新たに生み出さないかぎり、持続性のある森林の再生は難しい。