豊田 尚吾
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2008年06月26日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
2010年4月21日新規登録 |
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産経新聞 夕刊(大阪)2008年6月26日掲載
リテラシーという言葉を耳にする機会が増えました。これは読み書き能力、あるいは使いこなす能力と訳されています。例えばITリテラシーとはコンピューターや携帯電話などの情報技術を使いこなす能力のことであり、ひいてはそれがこれからの豊かな生活のために必要だという考えにつながります。またメディアリテラシーとはテレビ、新聞からインターネットまで、(主にマス)メディアが提供する情報をうのみにせず、疑い、検証する力のことです。他にもリスクリテラシーという言葉があります。悪質商法にだまされないことや、老後、病気などの不安に対する準備を怠らないことなどを意味します。
今回のポイントは、リテラシーに結びつけて用いられる言葉が私たちの生活にかかわる重要なキーワードになっているということです。具体的にはIT(情報技術)、メディア(コミュニケーション)、リスク(安全安心)であり、これらは生活に直結する大きな課題です。だからこそITリテラシーなどを持った、自立した生活者であることが求められているのでしょう。平成16年に改正された消費者基本法にも消費者の自立の支援という考え方が明記されました。グローバル化し複雑化した経済環境で不確実性が大きくなる中、成熟化した日本社会では消費者に対する手厚い保護を政府に期待することはもはや不可能だとの見方がそこに反映されています。
すでにエコリテラシー、経済リテラシー、エネルギーリテラシーといった言葉もあるようで、今後新しいリテラシー論が次々に現れてくるかもしれません。とはいえ生活者全員がすべてのリテラシーを習得することなどできません。どれか一つでも関心のあるものに挑戦することで、自らの成長を実感できればよいとの前向きな発想が必要でしょう。
リテラシーという言葉を見かけたら、それには重要なキーワードが結びついていて、自分を高めるヒントになるかもしれない、という意識で注目してみてください。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所主席研究員 豊田尚吾)