豊田 尚吾
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2008年09月04日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
2010年5月24日新規登録 |
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原油など輸入産品の高騰を背景に、モノの値段が上がっています。ならばできるだけ賢く買い物をしたいものです。では、例えば1000円の魚と200円の卵を買いたいとき、A店は魚が1割引き、B店は卵が5割引きならどちらの店に行きますか(両方は行けないとします)。
少し考えれば、両方100円引きで同じであることは分かります。しかし実際このように分かりやすく比較できない場合には、割引率の大きいB店に行く人の多いことが知られています。
人が何かを決めるとき、その問題を心がどうとらえているかを(決定)フレームといいます。フレームというのは窓などでも使われているように、問題を理解する「枠組み」という意味です。この例のようにお得さという点で客観的な状況が同じだとしても、表現の違いでA店とB店の評価が異なることをフレーミング効果といいます。
フレーミング効果には他にも、良い面を強調するか、悪い面を強調するかによって評価が変わるというものもあります。加えてそこに不確実性が入ってくると、さらに複雑になります。例えば安い外国産の家電か国産品を買うかで迷っているとき、外国産家電が10%の不良率だと言われるのと、90%は良質品だと説明されるのでは印象が異なりませんか? もしそうならフレーミング効果に巻き込まれているということです。よく考えると小売店などはこのような効果を戦術として利用していることに気づきます。
ではそれにどう対処すべきでしょうか。魚と卵の例のように、結局同じだと気づけばよいのは明らかです。一つの方法は自分に対しそれでよいのか今一度問い直すことです。その際、そこに何か隠されていないかと一歩踏み込んで疑う姿勢があると効果的です。
ただこのフレーミング効果の力はかなり強く、そこから抜け出すには相当のエネルギーが必要なようです。そう考えれば、すべての買い物にやみくもに時間をかけるのはかえって無駄です。まず重要なものとそうでないものを振り分ける力が必要なのです。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所主席研究員 豊田尚吾)