豊田 尚吾
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2008年10月30日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
2010年6月18日新規登録 |
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(産経新聞 夕刊(大阪)2008年10月30日掲載)
一人一人の心がけで社会をもっとよくしなければならないという主張をよく耳にします。
しかし実際には自分の損得を優先してしまい、他人や社会全体に利益をもたらすような行いをするのはなかなか難しい。これは誰もが日々実感する悩みでもあります。
「よい行いをするにはどうしたらよいか」は、不確実時代の生き方を探る上でも非常に重要なテーマです。
これに関して、最近興味深いレポートが内閣府国民生活局から発表されました。
「消費者の意思決定行動に係わる経済実験の実施及び分析調査」という難しそうなタイトルなのですが、要は消費者の行動を、経済学、社会心理学、脳科学といった、いろいろな学問を総合して分析しようと試みた研究報告です。
経済学では損得勘定、社会心理学では心の中での状況把握の仕組み、脳科学では脳部位による判断の方法の違いという視点から、社会的な配慮行動が十分に行われない実態を理解しようとしています。
その結果として環境配慮行動(社会に対する配慮行動の一つ)について、図のような整理を行っています。そして、社会への配慮をもっと意識させる、心の中の規範意識を育成する、行動できる機会を多く提供することなどを重視し、3つの科学が共同して知恵を結集することを提案しています。
このような学際(学問分野を超えた)的な取り組みは、まだ小さな一歩を踏み出したばかりです。しかし生活向上につながる可能性があり、今後の発展を大いに期待したいと思います。
私たちはこのような取り組みから、自分の行動の裏側にある心の動きを意識することの重要性を学ぶことができます。
例えば、そうすべきだと思うけれども実際にはできない行動を探してみましょう。それはなぜなのかを考えることは重要です。
どんな要因が自分の利他的行動を妨げているのかを考え、知ることは「自分自身を客観的に見る力を養う」ことにつながります。
そしてそんな自分に気づくことが、明日からの行動を変えるきっかけにもなるはずです。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所主席研究員 豊田尚吾)