豊田 尚吾
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2008年11月13日 |
豊田 尚吾
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(産経新聞 夕刊(大阪)2008年11月13日掲載)
蒟蒻(こんにゃく)ゼリーによる事故をきっかけに、大手メーカーが製品の一時製造中止を決定しました。
同様の出来事が以前から起こっており、この対処はやむを得ないという考えもあれば、餅(もち)をのどに詰まらせる人はもっと多くいるのにもかかわらず、結果として特定の会社に社会からの非難が集中したような形になったのは残念だという主張もあります。
確かに、このような問題は消費者の自己責任の範疇(はんちゅう)だという意見は筋が通っています。
しかしそれでも仮に死亡事故が年間数千件ということにでもなったら、規制もやむを得ないと考える人が多数を占めるでしょう。
つまり、自己責任という考え方が通用するかどうかを判断するためには、その事故発生の確率(リスク)の客観的なデータが不可欠だということです。
専門的な研究によれば、生活者が想像する事故の発生確率と、実際の客観的な発生確率にはズレのあることが実証されています。
例えば飛行機事故など、非常に印象の強い出来事は実際よりも発生確率が大きいと思われているとのことです。蒟蒻ゼリーの例も子供が犠牲になることが多いという意味で衝撃的です。
しかし死亡事故自体はここ数年、年間0から2件ほど、製造量は年5000万袋だとすると、客観的な発生確率は0・00001%以下となり、相対的な危険度は必ずしも大きいとはいえません。
そうであるならば、社会にとって重要な「再発防止」という意味では、危険情報や注意事項の周知徹底、加えて消費者の消費力向上への取り組みが妥当な対策だといえるのではないでしょうか。
帝塚山大学教授の中谷内一也氏は表のような客観的なリスクのモノサシを共有することの必要性を主張しています。
事故に遭われた方々の気持ちには十分配慮しながらも、このようなモノサシを参考にして、冷静な議論をするための共通の場を作ることが必要だと考えます。
私たちも自分が感じる危険性と、客観的な危険性にズレがありがちだという事実を知ることで、判断が独りよがりにならずにすむはずです。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所主席研究員 豊田尚吾)