中島 さおり
2010年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2010年07月01日 |
中島 さおり |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.93) |
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-子育てと仕事の両立を支える環境-
フランスはここ数年、出生率でヨーロッパ第1位を誇っているが、女性の就業率の高さでもスウェーデンとトップを争っている。25歳から49歳の「子育て期」の女性で、その8割以上が働いているのだ(ただし求職中を含む)。
フランスでは出生率の高さは、子どもを持っても働き続けられる環境が整っているためだと説明するのが一般的だ。実際、ヨーロッパでも出生率が低いドイツやイタリアなどでは、子どもを持ちながら仕事を続ける環境が整わないために、キャリアを優先する女性たちが子どもを産まない傾向が顕著である。これに対しフランスでは、子どもが1人しかいない場合には仕事をやめる女性はほとんどない。子どもが3人以上であっても、一番下が3歳以上であれば71%が働いている。
それでは、子育てと仕事の両立を支えているのは何か。まず、就業中の託児システムである。
フランスでは、保育学校という日本の幼稚園にあたる教育機関に、3歳児から小学校就学までの幼児がほぼ100%就学している。基本的に公立で無償のため、3歳児以上の託児システムという意味で女性の就労を助けている。
保育学校入学以前の乳幼児に関しては、フランスで発達しているのは保育園のような集団保育よりも、個人で預かるシステムである。託児を必要とする子どもの32%が、自宅に子どもを数人預かる公認の保育ママか、子ども自身の家にやって来て両親の不在の間、世話をしてくれるベビーシッターに預けられている。1980年代に、大幅に不足した保育園を補うために、こうした公認の保育ママやベビーシッターを個人で雇用するための財政的援助が制度化されたことが大きい。現在、保育園は増設傾向にはあるが、それでも収容数は絶対的に足りず、フルタイムの共働き家庭には十分なシステムといえないアルト・ガルドリー(託児所)を含めても、集合保育機関に預けられている幼児は20%程度である。
託児システムの足りないところを補うものとして、親が休みを取って子どもの面倒を見ることができる育児休業制度と、その間の収入補償である育児休業手当(上限付き)があげられる。育児休暇は1年毎の更新で、最長、保育学校に子どもが入れるようになる3歳まで取得することができる。原則的に元の職に、そうでなくとも同等の職に復帰できる。育児休業手当は、導入当初(1985年)は第三子からしか支給されなかったが1994年に第二子からへ適用範囲が広がり、2005年には第一子からへとさらに拡張された。現在、育児休暇を取得する女性は50%弱である。子どもが3人以上になると、育児休暇を取る人が多い。
3歳以下の子どもがある場合には、完全に仕事を休まず、週4日労働など短縮労働にすることも可能である。
こうした「働く女性」への配慮が実を結び、現在では「仕事か子どもか」という選択が女性に迫られるということはなくなっている。