豊田 尚吾
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2008年11月27日 |
豊田 尚吾
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(産経新聞 夕刊(大阪)2008年11月27日掲載)
現在の世界的金融市場の混乱を100年に一度の出来事だと表現する人もいます。こんな時こそ生活向上のためのリテラシーを獲得するチャンスです。リテラシーとは、ある問題と付き合っていくための知識や判断力のことで、この場合には、金融リテラシー獲得の機会だと考えてください。
為替相場を例に挙げると、1年半前に1ドルの値段は120円程度でしたが、今は100円以下に下がっていてドル安、つまり円高だといわれています。ところが現状は全然円高ではない、むしろ円安だという識者も多いのです。なぜでしょうか。
例えば今、1ドルが100円だとして、それで1個のパンが買えるとします。何年か後、アメリカがインフレになり、そのパンが2ドルに値上がりした時、もし日本では依然としてパンが100円のままであれば、100円は2ドルの値打ちを持つことになります。
つまり1ドルは50円が適正だということになり、円高になるはずです。
識者が主張しているのは、日本では物価が長年安定し、場合によってはデフレでモノの値段が下がることさえあった。その一方で、ドルなど海外のお金はインフレで相対的な価値を低下させてきた。
ならば例で挙げたような、モノを買う力で見ると、もっと円高であってもおかしくない、ということなのです。
もちろん為替相場が常にお金の購買力を均等化するように動くわけではありません。
ただ、以前1ドルが80円以下に下がったこともあるという事実は覚えておくべきでしょう。
外貨預金や外国為替証拠金取引(FX)が一般の生活者にも身近になりました。運がよければ為替の仕組みを理解しなくても利益は得られるかもしれません。
しかし、今回の金融危機で損失を被(こうむ)った人も多いと聞きます。
そんな時、何が失敗の原因だったかが自分なりに理解できるのとそうでないのとでは本人の納得感、今後の金融取引への態度が異なってくると思います。
自己責任意識を醸成し、よりよい生活者になるためにも、金融リテラシーを高めることは、私たちにとって重要なのです。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所主席研究員 豊田尚吾)