豊田 尚吾
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2009年01月08日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
2010年8 月9日新規登録 |
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(産経新聞 夕刊(大阪)2009年1月8日掲載)
フェアトレード(公正貿易)という言葉があります。発展途上国でつくられた製品などを適正な値段で長期的に購入することを通じて、その国の健全な経済発展を支援しようとする消費のことです。
逆に、どんなに美しいブランド品でも、貧しい国の労働者を不当な低賃金で雇ってつくったものなら、拒否するという消費者が増えています。いわばその製品の価格と品質だけでなく、履歴も考慮に入れて買うかどうかの判断をしているわけです。
欧州などでは、フェアトレードに限らず、環境、貧困、地域の社会基盤維持など、社会的な課題に対する意識を高め、積極的にかかわろうとする動きが拡大しており、そのような消費態度をとる人々をリスポンシブル・コンシューマー(責任感ある消費者とでも呼べばよいのでしょうか)と言うようです。
また、筆者も含め、今述べたような消費のあり方を倫理的な消費、あるいは社会的責任消費と表現する人もいます。しかし、日本では、社会的責任を果たしている企業に積極的に投資を行う、社会的責任投資という言葉がやっと広まりつつある段階で、まだそういう考え方は一般的ではありません。
むしろ、それはマーケティングと組み合わされ、ブランド店のエコバッグに大勢の人が群がるといった、本末転倒な現象も見られます。また、世界は100年に一度といわれる金融不況に翻弄(ほんろう)されています。そのため社会に配慮している余裕がなくなり、社会的責任消費への関心は高まるどころか、薄れてしまわないか心配になります。
しかし、こんな世の中の先行きが見えない不安なときにこそ、自分自身の「理念」をゆるぎないものにする努力こそが私たちの生活を豊かにする「生き方セオリー」だと考えたいものです。
2009年が始まりました。未曾有の不況の中でも、社会的課題に関心を持ち、それに積極的にかかわろうとする人が増えていく。今年がそんなリスポンシブル・コンシューマー元年となることを願います。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所主席研究員 豊田尚吾)