多木 秀雄
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2010年10月01日 |
多木 秀雄
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住まい・生活 |
その他 |
情報誌CEL (Vol.94) |
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−はじめに−
大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所(CEL)では、住まい・生活、都市・コミュニティ、エネルギー・環境の3つの領域で、生活者の視点から持続可能な生活・社会のあり方を探求している。こうした研究の一環として、2005年から毎年、「これからの住まいとライフスタイルに関する生活意識調査」を実施してきた。この調査は、住まいや生活に関して生活者が抱える問題をはじめ、期待する姿や方向性を把握し、その解決策や今後のあり方を探ってゆくことを目的としている。
本号では、持続可能性と生活満足について、とくに世代間の意識差に着目し、識者の方々から論点の提示をいただくとともに、今回実施した生活意識調査の結果を受けて、CELの各研究員がそれぞれの研究分野からの報告と提言を試みている。
−直面する諸課題と生活者の意識−
高度経済成長が加速を始めた1960年頃から今日まで約50年、この間私たちの生活には多くの便利な製品がもたらされ、様々な欲求が満たされ、生活面での満足度が高まった。しかしながら、今日新たな多くの課題に直面している。今回の調査で尋ねた「関心のある政治・経済・社会問題」では、少子・高齢化、生活・暮らし向き、地球環境、雇用等の問題への意識が高く見られた。
わが国は他の先進諸国と比較し、高齢化が他に例を見ない速度で進んでおり、また高齢世帯数中、家族類型の「単独世帯」の割合は一貫して上昇を続け、2005年の28.5%から2030年には37.7%へと上昇することが見込まれている。2015年にはいわゆる「団塊の世代」が65歳を超える。高齢者の就業意欲は高く、総務省の「就業構造基本調査」(平成19年)によれば、男性の場合、60〜64歳で73.1%、65〜69歳で50.1%、女性の場合、60〜64歳で43.5%、65〜69歳で28.2%と多くの高齢者が就業している(平成22年版高齢社会白書:内閣府)。
エネルギー消費の増大とこれに伴う地球温暖化は、私たち人類全体にとって大きな問題である。わが国でも、温室効果ガスの排出削減目標を定め、高効率の機器や諸施策の採用とともに、生活者の意識も高まっているが、これを世代の間で見ると、近代的な製品が充分にはない時代を過ごした世代とそうでない世代とでは、省エネルギーや環境に配慮する意識や行動に差がある。
現在の雇用情勢は、これから社会に出てゆく世代にとって生活満足を考える以前の問題ではなかろうか。近年の大きな経済減速により、2010年春の新規学卒者の就職率は、中学卒、高校卒、大学卒ともに前年同期に比べて悪くなった。2009年の完全失業率は男女とも全ての年齢層で上昇した中、とくに15〜24歳の層で大きく上昇した(平成22年版労働経済白書:厚生労働省編)。
これらに関して、今回の生活意識調査に見られる特徴を拾うと、年齢が高くなるにつれ、環境配慮の意識と行動を実践している傾向が高くなっている。また、60歳代以上の高齢層は「近隣との関係が良好であること」を「幸福の条件」として重視しており、20歳代、30歳代の層はこれに比べると、重視をしていない。「関心のある社会問題」の質問では、20歳代の関心事は圧倒的に「雇用」に関するものであり、男性で58.4%、女性で63.3%もの回答者がこれを選択している。