Dr.Ingrid Haslinger、山下 満智子、宇野 佳子
2010年10月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2010年10月01日 |
Dr.Ingrid Haslinger、山下 満智子、宇野 佳子 |
住まい・生活 |
食生活 |
情報誌CEL (Vol.94) |
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これから3回にわたり、宮廷を中心にした「貴族のデザートの食卓」について紹介する。
−食卓における最後の飾り−
デザートについて17世紀後半の文献は、「デザートとは、食卓における最後の飾りである。食事を締め括るデザートの主なものは、様々な果物、砂糖漬けの果物、ゼリー、マーマレードなどである。デザートには、最高級の果物が、季節を問わず調達されなければならない。凍らせた果物やミルク、クリーム、ゼリーやアスピックゼリーなどのデザートを最高の状態で味わうためには、それらは供される直前に型から出さなければならない。さらにコーヒーも(飲みたいと思うならば)、それもデザートとともにサービスされる。」と述べている。
−デザートにふさわしい稀少で高価な器−
この時代のデザートは、材料や製作に多額の費用を要するものであった。そのため、デザートを給仕する器としては、当時、金や銀よりも希少で高価とされていた陶磁器がふさわしいと考えられ、好まれた。ヨーロッパでは、18世紀前半に初めて陶磁器工房が誕生し、その生産を始めたが、それまでの17世紀の終わりから18世紀初めにかけては、日本や中国から磁器を輸入していた。
輸出港の名前から名付けられた日本の磁器「伊万里」は、非常に高価な品であった。しかし、輸出用として日本で生産された器は、必ずしもヨーロッパの食文化に合致するものではなかった。ヨーロッパでは、燭台やセンターピースや杯洗などが必要であった。そのため日本から輸入された伊万里は、組み直されて、金や銀の装飾が施され、燭台やソース入れや皿として利用された。しかし、ヨーロッパであとから取り付けられたこうした金や銀の装飾は、日本からの輸入品をヨーロッパの食卓にふさわしい形にするだけでなく、高価な磁時、輸入された磁器は金や銀よりも希少で価値があるとされ、18世紀の貴族の家庭には必ず備えられているものであった。
−フォークの登場−
「フォーク」は、新しい食器として、まずデザートの食卓に登場し、やがて食事の席でも使われるようになった。アジア起源のデザート用の食器類には、磁器の柄に刃先が金または金メッキというナイフやフォークもあった。
食事用フォークについては、1716年のマルペルガーの“Frauenzimmerlexikon(女性の家庭事典)”は、「食事用フォークというものは、ナイフでうまく切ることができるように料理に突き刺して、テーブルにおいて使用するものである。」と、わざわざその使い方を説明し「今までの指でつかむという食べ方は、脂が指の間を伝って同席者たちを不快にさせ、無作法である。最新のフランスの様式では、フォークの刃先は3本または4本である。そして皿の料理を押さえるのに適している。」などと述べている。