豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2010年10月28日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
ディスカッションペーパー |
10-07 |
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1.はじめに
少子高齢社会に対応しなければならない日本社会において、自助自立の精神と努力が必要であることは言うまでもない。その一方で、そもそも社会が複数の生活者の集まりからなる存在であり、それは単なる集合ではなく、様々な面でつながっているという事実も「活用」していく必要がある。
すなわち、それはお互い様の協力を意味しているのであり、具体的にはそれぞれの交流ごとに成立するWINWIN関係であったり、情けは人のためならず的な長期的な互酬関係であったり、多様な形態を取る。しかし、それらの実現のためにはいずれの場合でも、生活者相互のコミュニケーションが重要であり、またその基底にある相互の信頼関係を醸成していくことが不可欠である。
そのような認識のもと、本稿では他者あるいは社会に対する信頼について、データをもとに考察する。分析対象とするのは大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所(以下CEL)が行ったインターネット調査の結果(データ)である。
以下、次節では社会的信頼に関する、本稿における問題意識を明らかにするとともに、上記データから得られる基本情報を確認する。3節では信頼に関する意識に関して時系列的変化を見るとともに、そこに何らかの因子が存在するかどうかに関する探索的分析を行う。4節では信頼感と、その他の属性との関連について検討を行う。
結果として、以下のような事実認識、考察が結論として得られた。まず、自分自身が人を信頼するかどうかは、他者の善良性に対する信念が基底になっているのではないかということ。他者や社会に対する信頼感は個人において固定的であるように思われるが、実際のデータでは一定程度の変動があること。そこから、社会への信頼というものは何らかの施策や取り組みでコントロール可能なのではないかという考察を導いた。また探索的な因子分析により、一般的な社会への信頼、自身のネットワークを活用した上での信頼、長期的に構築する信頼といった、複数の因子を抽出した。また、その結果を参考に、社会的信頼を表す主成分を定め、それをもとに各回答者に社会的信頼度を表すスコアを割り当てた。そして分散分析や相関係数の確認等を通じて性別差、年齢差、幸福度との関係などの存在を明らかにした。