豊田 尚吾
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2009年02月05日 |
豊田 尚吾
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エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
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2010年11 月25日新規登録 |
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(産経新聞 夕刊(大阪)2009年2月5日掲載)
環境問題など社会的な課題について「努力は必要だけど自分だけが取り組んでもほとんど意味はないよ」と思っていませんか。確かに一人一人の直接的な影響力は、全体の中では小さいかもしれません。
そこで人の「感受性」に注目した研究を紹介したいと思います。例えば、世の中には誰の目も憚(はばか)らず躊躇(ちゅうちょ)なくゴミのポイ捨てをする感受性の乏しい人がいますね。
そして、少しは人の目を気にするけれど、“一人でも”ポイ捨てをしている人がいれば自分も便乗して捨てようと思う人もいます。
同じように、“二人”がポイ捨てをするのであれば自分も、と思う人が捨てて…。このように連鎖的に行動が引き起こされた結果、街全体がポイ捨てする人であふれることになるというのです。
しかし、たとえ一人がポイ捨てをしても、他の全員が「二人以上ポイ捨てをしなければ自分も躊躇する」という感受性の持ち主ならば、ポイ捨てはそこで止まり、街全体の清潔さは維持できることになります。
研究は、ポイ捨てが止まるか広がるかの「感受性の閾値(いきち)」を分析することを目的としています。しかし、生き方セオリーで重要なのは、あなたの行動が誰かに見られていて、見る人の意思決定に影響を与えているという事実です。自分のポイ捨てが他の人のポイ捨てを促している、あるいはその逆もあるかもしれないのです。
もちろん、周囲の人たちの感受性の如何(いかん)で自身の影響力の大きさは変わってきます。しかし、お互いが影響しあっているということを理解し、自身の影響力の可能性を自覚することで、自分の行動も変わるのではないでしょうか。
一つ、即時効果のある例を挙げれば挨拶(あいさつ)でしょう。自分から挨拶をすれば、大概の人は挨拶を返してくれます。それを繰り返せば、相手も影響され、良い関係をつくる第一歩になりやすいのです。
地域コミュニティの疲弊が問題視されて久しい昨今、簡単なことのように思えるかもしれませんが、挨拶の励行からその立て直しを始めることは効果的だと思います。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所主席研究員 豊田尚吾)