豊田 尚吾
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2009年03月05日 |
豊田 尚吾
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エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
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(産経新聞 夕刊(大阪)2009年3月5日掲載)
エネルギー・環境問題が国際的重大事となるなか、究極の再生可能エネルギーである太陽光の効率的活用は必要不可欠の課題です。政府は固定価格買い取り制度(FIT)を平成22年度から導入するとのことです。内容は家庭の太陽光発電パネルで発生した余剰電力(使いきれずに余った電気)を、通常の電気料金より高い値段で買い取るよう電力会社に義務づけるものです。
買い取りのための費用増加分は、電気の利用者全員の料金を少し上げることで賄います。この制度で太陽光発電パネル購入の採算性が改善され、再生可能エネルギーの導入促進が期待できます。
先に同様の制度を採用したドイツでは、太陽光発電パネルの導入量が大きく増大し、日本を追い抜いて世界一になりました(2005年以降)。現在、各国で同様の取り組みがなされています。
しかし、制度を作ったからといって成功するとは限りません。ドイツでは3段階で制度改革をする手間をかけ、国民の理解と行動を促しました。周到な準備と臨機応変な対応が、世界一の獲得につながったと言われています。
日本での制度設計の詳細はまだ、正式に決定していません。買い取り価格や期間、費用負担のあり方などで、本当に生活者が魅力を感じるメニューなのかは、これから大いに議論していくべきです。当然、さまざまな利害得失はあるでしょう。
当然、それを乗り越え、本当に次世代の生活像が展望でき、世界に胸を張って紹介できるような実効ある制度にしなければなりません。
得になる仕組み=実利は非常に大きなインパクトがあります。しかし、エネルギーや環境に対する生活者の意識の高まりが基盤にあってこそ、それが一層社会に受容され、影響力と意味のあるものになります。そのような社会づくりにも並行して取り組んでいかなければなりません。制度変更は、あるべき社会の実現に取り組んでいくための“きっかけ”あるいは“チャンス”なのです。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所主席研究員 豊田尚吾)