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情報誌CEL

松井 郁夫

2011年01月11日

「木組」でつくる日本の家−ワークショップ「き」組の試み

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媒体(Vol.)

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2011年01月11日

松井 郁夫

住まい・生活

住環境
住宅
住生活

情報誌CEL (Vol.95)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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−木の家をつくるということ−

 「住むのならば、やはり木の家」と考える人は多い。木という素材の良さを知り、木の家の快適さを望む住まい手は、まだまだたくさんいる。しかし、杉や桧、松などの国産の無垢の木を使い、竹を編んだ小舞に泥を塗って壁にし、家をつくる人は少なくなってしまった。なぜならば、明治時代に導入された外来の工法や、第二次大戦後の高度成長期に押し寄せた工業化の波が、日本古来の家づくりの工法を変えてしまったからである。
 さらに工法ばかりでなく、木材の供給体制も変わってしまった。安価な素材を求めて外材を輸入したことが、国内の林業の衰退につながり、その後の日本の山林の荒廃につながったのである。
 本来、日本というアジアモンスーン気候の地域では、樹木は身近な資源であり、真っ直ぐに育つ杉は、建物づくりには欠かせない優れた建材といわれた。だからこそ、昔から身近で手に入りやすい豊富な木を使って、日本の建築は木造技術を中心に発展してきたといえる。
 伝統構法と呼ばれる木と木を組む技術は、仏教とともに中国から韓国を経て、古代の日本に伝わり独自の発展をし、大工職人とともに日本各地に広まった。はじめは神社や寺院を造る技術であったが、貴族や武家の住宅に応用され、時代を経るごとに庶民の家である町家や農家にもその技術は伝播し現代に至っている。
 まさに伝統的な木組の大工技術は、千年以上の歴史の中で体系化され、素材としての木を生かす技術として大工棟梁を頂点に職人集団を組織し、山や地域を支える産業としても日本の社会の根幹を成すものであった。 しかしながら、現代では伝統構法を簡略化した在来工法やプレハブ住宅がシェアをのばしており、時代とともに機械化され、合理化の名のもとに大工の手刻みを必要としないプレカットが主流となっている。最近20年ほどの間に、いつの間にか大工は柱や梁を刻むことがなくなったのである。
 振り返ると、明治から戦後のこのような木造建築の変遷に、重要な社会的問題が提起されている。筆者はプレハブリケーションやプレカットの普及によって大工が架構を刻まなくなることで、木材の加工技術の伝承ができなくなってしまうのではないかと危惧している。また林業の実態を知るほど、山に植林できない安価な素材価格では、将来の日本の国土はどうなるのか心配である。

 課題の出発点は、消えそうな大工技術と循環できない素材生産の現場にある。

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