橋本 務太
2011年01月11日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
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2011年01月11日 |
橋本 務太 |
エネルギー・環境 |
地域環境 |
情報誌CEL (Vol.95) |
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−世界の森林資源の現状−
木材は、それを産出する森林が適切に管理されていれば、ずっと使い続けることのできる持続可能な資源である。しかし、世界の自然林は毎年およそ1300万ヘクタールずつ減少(※1)しており、これは日本の国土の約3分の1に相当する。森林が減少している理由は幾つかあるが、主因としては、電気やガスなどにアクセスできない地域における木材の燃料としての利用、農地開発、林産物(紙、木材、木質バイオマス燃料など)生産のための合法および違法な伐採などが挙げられる。
日本では、1年間におよそ6300万立方メートルの木材やチップを使用し、その約72%は輸入品(※2)であるが、この中には違法伐採などのリスクが高い国や地域に由来する原料や製品も混ざっている。また、伐採などに関する法律に適合していることが実際に森林を破壊していないとは限らず、合法的な伐採であっても、環境面・社会面から特に貴重な「保護価値の高い森林(High
Conservation Value Forest : HCVF)」と呼ばれる森林を破壊するような方法で伐採がなされているケースも存在する。以下、特に日本との木材・紙製品の取引で関連の深いインドネシアと極東ロシアの例を紹介する。
−インドネシアの事例−
インドネシアのスマトラ島では、現地の製紙業者による原料採取やオイルパーム農園の開発のために自然林が伐採されており、同島中部のリアウ州では、85年には642万ヘクタールあった森林が2007年には225万ヘクタールと、およそ65%減少(※3)している。伐採地周辺の森林は生物多様性の観点からも貴重で、絶滅の危機に瀕するスマトラゾウ、スマトラトラなどの動物が生息しているほか、維管束植物の数では、アマゾンを上回る種の数が確認されている。また、この地域には泥炭土壌の上に森林がある「泥炭林」があり、伐採するために土壌からの排水を行うと、膨大な炭素が排出される。しかし、泥炭林を含む自然林の大規模皆伐とその後の植林地化や違法伐採が後を絶たず、森林から追い出された野生生物と地域住民の衝突といった事態まで発生している。
(※1)FAO
Global Forest Resources Assessment 2010
(※2)林野庁平成21年木材需給表
(※3)WWFインドネシア報告書「インドネシア、スマトラ島リアウ州における森林減少、森林劣化、生物多様性の喪失および二酸化炭素の排出―インドネシアの一つの州での過去四半世紀の森林と泥炭土壌からの炭素損失とその将来―」より