美濃にわか茶屋
2011年01月11日作成年月日 |
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2011年01月11日 |
美濃にわか茶屋 |
エネルギー・環境 |
地域環境 |
情報誌CEL (Vol.95) |
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−木造で初めて防災拠点機能を備えた道の駅−
−地域材活用を通して実現する交流・防災拠点づくりと地域振興−
「うだつ」の上がる古い町並みが残る岐阜県美濃市。市内を流れる長良川堤防近くに道の駅「美濃にわか茶屋」がオープンしたのは2007年9月。メインの建物である中央棟と西棟は、地域材の「長良杉」を使った木造建築である。内装はもとより施設内の特産品・農産物の直売所やレストランなど、随所に地場へのこだわりが見られ、休憩に立ち寄るドライバーや観光客、地元の人々も含めて、平日でも営業時間中は人の流れが絶えない。
この「美濃にわか茶屋」は、全国で初めて防災拠点機能を備えた木造の道の駅としても注目された。木造建築の専門家という立場で設計に携わったのが、岐阜県立森林文化アカデミー講師の辻充孝氏である。「美濃市は、長良川流域の自然環境を守り育て、地域文化や伝統を次代に継承するまちづくりを進めており、その一環として2003年頃から『道の駅』も計画されたのです」と辻氏。
市民懇話会で協議を重ねた結果、地域の自然環境や景観に合った木造建築物にすることに加え、新潟県中越地震の影響もあって防災拠点施設にする意向がまとまった。
「最終的には国土交通省が認定するので、道の駅では前例がなかった木造建築の実現のため、私たちは、耐震・耐火性能、ローコスト化の数値を明確化し、木造ならではの提案を盛り込みました」 その大きな柱が、地域材である長良杉の活用だった。そこで、地域の木材蓄積量や伐採が必要な山林の状況を調査。地元林業の将来を見据え、建物の構造部材に適した材を選んで適正価格で購入した。「地域材を利用することで、輸送時の環境負荷を大きく削減できるメリットもありました」。
こうしてでき上がったのが、木造ながら高い耐震・耐火性能と防災拠点としての各種機能を持つ、大きな木組み構造が特徴的な建物。その内部には地域材の手作り家具を配置し、美濃和紙を使った装飾を施すなど、地域の自然や林業、伝統文化について、人に聞いたり、話したくなるような、物語性のある施設にすることにも努めた。
「訪れる人々の交流を促す仕組みを継続していくことも重要。そこで施設内の『ビジターセンター』では、森林文化アカデミーの学生や教員の企画・運営で、子どもや一般を対象に自然体験プログラムやワークショップを実施するなど、まだいろいろな展開が考えられます」と辻氏は今後に期待をかける。