渡辺 龍也
2012年01月05日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2012年01月05日 |
渡辺 龍也 |
住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.98) |
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-フェアトレードとは-
近年、日本でも若い人たちを中心に注目を集めるフェアトレード。日本語では一般的に「公正貿易」と訳されているが、国際的には次のように定義されている。
フェアトレードとは、より公正な国際貿易の実現を目指す、対話・透明性・敬意の精神に根ざした貿易パートナーシップのことで、とりわけ南の疎外された生産者や労働者の人々の権利を保障し、彼らにより良い交易条件を提供することによって持続的な発展に寄与する(2001 FINEによる定義)。
より具体的には、(1)生産者や労働者と対等・互恵的な関係を築き(2)「買い叩き」をせずに公正な価格・賃金を支払い (3)求めに応じて対価を前払いし (4)長期的な取り引きを維持し (5)生産者の力を強化し (6)児童労働・強制労働をなくし (7)環境やジェンダーに配慮する等の原則を守ることを通して、市場や社会から疎外された人々が貧困から抜け出して自立するのを手助けし、国際貿易を公正なものへと変える。それがフェアトレードなのである。
-フェアトレードの沿革と今-
フェアトレードは、第二次世界大戦の直後、アメリカのNGOがプエルトリコの貧しい人々の生計の一助にと刺繍製品を買い入れて販売したのが始まりと言われ、ヨーロッパでも同様の活動がスタートした。当初は教会をベースとしたチャリティ活動だったフェアトレードも、生産者の自立を中長期的に支援する開発協力活動へと衣替えしていった。
その後、フェアトレード専門店が欧米に生まれ、南北を繋ぐ仕組みが整っていったものの、1980年代に入って頭打ち状態に陥った。NGO的なやり方では倫理的消費者の枠を超えた広がりを実現できなかったのである。そこで一般市場に打って出ることが構想され、80年代末にフェアトレード・ラベルが誕生した。それは、フェアな基準を満たした産品であることをラベルで表示し、通常の流通販売ルートに乗せることで市場を広げようとする、一般の企業・消費者向けのフェアトレードの仕組みである。
こうして、当初からのNGO的な「連帯型」フェアトレードと、ラベルを使った主として企業による「認証型」フェアトレードという二つの相互補完的な形態が並立することとなった。
ラベルの登場によってフェアトレードは急速に普及していったが、それが社会現象化したのにはより大きな時代背景があった。社会主義が没落・崩壊したことで、新自由主義に根ざしたグローバリゼーションが90年代以降世界を席巻し、「底辺への競争」や格差の拡大を世界規模で生んだ。人や環境よりも自由競争と利潤を優先するグローバリゼーションに異議を唱える対抗概念・運動としてフェアトレードは広く支持を集めるようになったのである。