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情報誌CEL

森 正美

2012年03月26日

笑顔でつながる地蔵盆

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2012年03月26日

森 正美

都市・コミュニティ
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情報誌CEL (Vol.100)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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 子ども達のはしゃぐ声、見守る大人の笑顔。そこには地域のつながりが広がっている。8月24日(旧暦7月24日)頃、近畿各地で町内会・自治会などによって「地蔵盆」がおこなわれる。
 地蔵盆は一般に、子どもの健やかな成長を祈る行事とされる。「お地蔵さん」や「お地蔵様」と親しまれる「地蔵菩薩」は、仏教では、釈迦の入滅後から弥勒菩薩の登場まで、六道を輪廻する衆生を救う存在という。地蔵信仰は、浄土で往生できない者は地獄に堕ちるという浄土信仰とともに広がり、賽の河原で石を積む逸話のように成仏できない子や水子の供養、道祖神信仰とも重なり継承されてきた。
 地蔵盆行事は、地域・町内毎に多様だ。ここでは、2003年から06年に調査した京都府宇治市の中宇治地域の様子を紹介したい。当日は、地蔵の祠を飾り、集会所などに設えられた祭壇にお地蔵さんが据えられる。彩り美しく地蔵に化粧を施す町内もある。会場の天井や入口には、町内の子どもの名前入りの紅白提灯がつるされ、家族の歴史を伝えている。子どもが生まれると提灯や前掛けが納められ、「仲間入り」のお菓子が配られる。嫁に行った娘の子どもや町外で暮らす孫(外孫)も、この日を楽しみに訪れる。
 地蔵の祭壇や会場は、赤い毛氈や紅白幕で飾られることもあり、紅白ののし袋と共に神仏習合的民間信仰がみてとれる。仏教的要素としては、「数珠繰り(回し)」とよばれる念仏がある。寺の住職に念仏を依頼する町内もあるが、たいてい年長さん・尼講さんといわれる年配女性が先導(導師)を務め、子どもも一緒に輪になりご詠歌に合わせ大きな数珠を回す。慣れない正座で、重い数珠を一生懸命回す子ども達の姿はなんとも微笑ましい。その他、金魚すくい、輪投げ、各種ゲームなど子ども向けの行事が用意され、お菓子やかき氷、ジュースなどをもらえる楽しい1日となる。また大人の福引き、夜に大人の食事会などを行う町内もあり、貴重な町内親睦の1日ともなっている。
 しかし、少子高齢化や地域の関係の希薄化が進む現代、地蔵盆を実施・継承するには課題も多い。地蔵盆の準備が役員の負担に感じられたり、子どもの減少などで行事が簡素化されたりすることもある。「今は幼い子どもがいなくても、一度やめたら復活しにくい。将来孫が生まれるまでは頑張りたい」と、子どもがいない念仏だけの地蔵盆を続けている町内もあった。学生が焼きそば作りや紙芝居、風船遊びなどの手伝いをさせていただいた町内では、若手不足ということで大変喜ばれた。厳しい社会変化のなかで、どの町内もなんとか地蔵盆を継承しようと工夫と努力をされている。

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