佐藤 友美子
2012年03月26日作成年月日 |
執筆者名 |
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2012年03月26日 |
佐藤 友美子 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.100) |
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地域文化の振興に力を尽くした個人や団体を顕彰する「サントリー地域文化賞」は、今年で34回目を迎える。地域文化には様々なジャンルがあるが「まつり」はその中でも大きな位置を占めている。まつりには、特別の意味のある日がある。しかし、その日、一日がまつりなのではない。まつりを成立させているのは日常の営みであり、人間関係であり、地域の文化そのものである。
かつて、「まつり」があることで、人と人は自然に結びつき、地域としてのまとまりを作ってきた。しかし、人口減少期に入り、多くの地域で過疎化が進み、地域での暮らしそのものが難しくなっている。一方、都市部では人は沢山いるにもかかわらず、祭りどころか近所づきあいもないことさえ珍しくない。祭りはもはや、その役割を終えてしまったのだろうか。
-守ること、変化すること-
祭りを取り巻く環境は厳しい。少子化で継承する子どもたちの数は減り、神輿の担ぎ手の若い人がいない、というのはよくいわれることだ。後継者不足だけでない。地域の経済が疲弊する中、祭りを支える人たちの経済的基盤も磐石ではない。祭りを守り、継承していくとはどういうことなのか。祭りが紡いでいる絆とは何なのか。まずは伝統的な祭りを切り口に見ていきたい。
-開くことで守ってきた 「秋葉祭り」-
過疎と高齢化は、多くの地域に共通の課題である。210年の歴史を持つ土佐の「秋葉神社祭礼」は、最終日には旧仁淀村別枝地区の3集落から200人の行列が出て、早朝から夕方にかけて3キロの山道を練り歩く。小学校1年から中学3年までの子どもたちによる太刀踊り、火消し装束の若者が飾り棒を投げあう鳥毛ひねりなど、若い人が主役のこの祭りにも少子化の波が押し寄せている。神事である祭りは、もともとは3集落の氏子のみが行うものであった。少子化で立ち行かなくなり、1975年、隣の別府地区の2つの小学校に祭りの参加者を「雇い」に行く習慣が始まっている。その後、祭りはさらに外部に開かれ、消防団や役場の協力を得て、別府小学校の生徒と里帰りした別枝出身者の子どもによって成り立っている。地区内外の人が入る保存会、練りの通り道の枝払いをする「によど雑技団」、祭りの縁で集まった人たちによる「秋葉まつりの里を元気にする会 えんこ巌」。祭りの当日には人口150人、高齢化率74%の地区に1万人を超える人が訪れる。県内でも有数の祭りは外部の人たちによって支えられ、多くの人にとっての居場所にもなっているのである。