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情報誌CEL

名古屋大学 千年持続学研究グループ

2012年07月10日

「30W生活」と「千年持続学校」の試み

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2012年07月10日

名古屋大学 千年持続学研究グループ

エネルギー・環境

再生可能エネルギー
エネルギー・ライフスタイル
地域環境

情報誌CEL (Vol.101)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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100%自然エネルギーで里山に暮らしたい ― 行政やNPOと協働で若者移住支援

 きっかけは、「らせん水車」との出合いだった。大正時代に富山県で発明され、かつては農業用動力源として全国で使われていたこの水車を、富山県立大学がマイクロ水力発電システムとして研究開発中――この情報を雑誌で得た名古屋大学の高野雅夫准教授は、2008年に地元住民の協力を得て水車の製作に着手。NPOと協働で岐阜県揖斐川町の農業用水路に設置し、地元の古民家「竹姿庵」でデモを行った。
 「出力はわずか30Wですが、高輝度LEDで自作したランプで一軒分の照明がまかなえるうえ、小型の洗濯機や冷蔵庫、パソコンも使えますし、煮炊きや暖房には薪や炭を使えばいい。エネルギー自給の暮らしが十分可能だと分かりました」と高野准教授。
 環境学から派生した学問領域である「千年持続学」をテーマに「千年先でも持続可能な地球と社会のシステム」を構想し、自然エネルギー技術の開発研究と地域社会への導入について研究を重ねてきた。そのひとつがこの実証実験だった。
 「自然に恵まれた農山村では食とエネルギーの自給も可能ですし、電気をあまり使わなくても豊かな暮らしができることが実証できました。結局、エネルギーをどう利用するかは価値観や生き方の問題になってくるわけです」
 一方、農山村を抱える自治体の多くは高齢化、過疎化問題を抱えるだけに、地域再生につながる自然エネルギーへの期待も大きい。愛知県豊田市では、農山村と都市の住民の交流を進めながら里山への定住を後押しするため、「里山くらし体験館・すげの里」という公共施設を昨年5月にオープン。高野准教授の研究室は設備面で、太陽光パネルや地中熱利用、薪ストーブなどを提案した。
 「自然エネルギー100%で運営する国内では他に類を見ない公共施設で、宿泊しながら『エコで豊かな里山の暮らし』が体験できるモデルハウス」 実際、田舎で自給自足しながら生活することに魅力を感じる都会の若者が、3・11以降さらに増えているという。そこで高野准教授と地元NPOが中心になって立ち上げたのが「千年持続学校」だ。
 「田舎への移住希望者や自然エネルギーに興味のある人が集まって、お金や技術、知恵を出し合い、協働で里山に住まいを建てるのです。建材には地元の間伐材を利用し、太陽熱やバイオガス、薪ボイラーなど自然エネルギー100%自給をめざす。その中で若い人たちは稼ぎになる技術を学び、地元の人々と付き合いながら地域に溶け込んでいく。そうすれば田舎の集落も持続可能になります」
 いわば都会人が「暮らしを自分の手に取り戻す生き方」の創造の場であり「新しい里山の共同体」の組織化だ。高野准教授はそこに、エネルギー多消費型の生活スタイルから脱却した、持続可能な地域社会のひとつのあり方を思い描いている。

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