赤池 学
2012年07月10日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2012年07月10日 |
赤池 学 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.101) |
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商品や施設、地域開発を手がけてきたデザイナーの私が、最も大切にしていることは、望まれていながら、これまでにはなかった新しい価値やビジネスモデルを、「構想」することである。そのために心がけていることは、現状や現実を肯定せず、理想やミッションから立ち返ってソリューションを考える、「バックキャスティング思考」である。
様々な環境問題の解決や、スマート社会の実現を考える時にも、このバックキャスティングが大きな意味を持つ。それは、「一個の地球」から立ち返る社会システムのリデザインや、私はこう生きたいという理想から明日のアクションを構想することだ。
自然に学ぶネイチャーテクノロジーや、持続可能なライフスタイルを研究している、この本の筆者らも、来るべき資源とエネルギー制約、人間らしい暮らしやビジネスのあり方からバックキャスティングし、これからのチャーミングな働き方を提言している。
私たちは、1日の3分の1を職場で過ごし、通勤や残業を加えると、1日の半分以上を働く時間で消費している。そこに、これから望まれる「少エネルギー社会という制約」をかけた時、どんなワークスタイルが現出するかを、本書は夢を含めて語り出しているのだ。
例えば、現在のオフィスでは、750ルクス以上の照明が採用されている。しかし、そこに個人で自由に照度を選べるシステムを導入した三菱地所の新丸ビルは、照明エネルギーの6割削減に成功した。クリエイティブクラスの人々ほど、明るい照明を嫌い、自然に開かれたパッシブエコな空間で景色を楽しみながら、創造的に働いていることも明らかになった。 欧米では最近、「グリーンオフィス」が台頭してきた。風、光、緑を感じられるパッシブエコなオフィスや、ガーデンに建てられた温室会議室などだ。日本でも「川床カフェ」があるように、水を感じられる「川床会議室」がウォーターフロントに作られたら素敵だ。
オフィスビルの空きスペースに、料理教室などのカルチャースクールを入れれば、半働半遊のワークスタイルも普及する。太陽の光を最大限に活用するため、日の出からお昼まで働く「午前ワーク」を認めれば、「午後レジャー」も楽しめるようになる。
人間らしい生き様から発想すれば、賢いエネルギーの使い方は自ずと生まれてくる。エネルギー制約が生み出すクリエイティブライフを、本書の「構想」から学んで欲しい。