情報誌CEL
コラム「遊」 車内での楽しみ方がいっぱいの鉄道の旅
作成年月日 |
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備考 |
2012年07月10日
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野田 隆 |
住まい・生活
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ライフスタイル
その他
消費生活
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情報誌CEL
(Vol.101) |
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乗り物での移動というと、じっと座って時間が過ぎるのを待っているだけというイメージはないだろうか? クルマや飛行機は、シートベルト着用が決まりなので、道中で車内や機内を自由に動き回るという発想はない。長距離バスも同様だ。せいぜいトイレに行くくらいだろう。だから、列車の旅だって、駅に到着するまでじっとしていなければならないと思っている人は案外多い。
ところが、そんな常識を覆すような楽しい列車が、観光列車を中心にずいぶん増えてきた。もちろん自分の席はあるのだが、展望席やラウンジ席が特別に設けられていて自由に移動できるのだ。これなら、車窓のポイントが右に左に変化する場合に対応できるし、気分転換に売店へ行って、土産物やドリンク、軽食を購入してテーブルのある席で寛ぐことも可能だ。今や、全国的にこの種の列車が走っているが、一番人気はJR九州であろう。
全国のローカル線の中でも人気路線として知られているのが南九州の肥薩線で、ここにはユニークな観光列車が多数走っている。まず、熊本から人吉までは昔懐かしい「SL人吉」に乗る。機関車自体は大正生まれの古豪だが、客車は最近の車両をレトロ風に改造したものだ。最後尾には展望室があり、列車中ほどには売店と軽食コーナーがある。列車は球磨川の急流に沿って走り、右に左に移りゆく様子を眺めたいなら、展望室に行くとよい。景色を眺めるのに疲れたら、書斎風のソファー席もあるので、一休みできる。
人吉から吉松にかけての山越え区間は、ループ線とスイッチバックという旧式の線路配置で峠に挑む。こうした状況は鉄道に詳しくないと分かりづらいものだが、車内の女性アテンダントが説明してくれるので助かる。また日本三大車窓と呼ばれる絶景ポイントも、観光列車なら、臨時停車の上、アテンダントが窓を開けるのを手伝ってくれるので写真も撮りやすい。まさに至れり尽くせりの旅が可能なのだ。
鹿児島からの帰りは、九州新幹線で一直線に戻れる。肥薩線のようなのどかさはないけれど、「つばめ」の工夫された車内は、他の新幹線と違って実に心地よい。このようにバリエーション豊かな列車を乗り継ぐ旅は、単なる移動手段ではなく、それ自体が楽しみとなる。次は、飛行機やクルマではなく、ぜひ鉄道旅行をお試しあれ。