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情報誌CEL

豊田 尚吾

2012年07月10日

生活者の幸福感に関するデータ分析 ― 主観的幸福感に影響する要因とは

作成年月日

執筆者名

研究領域

カテゴリー

媒体(Vol.)

備考

2012年07月10日

豊田 尚吾

住まい・生活

ライフスタイル
消費生活
その他

情報誌CEL (Vol.101)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

 エネルギー・文化研究所(CEL)ではいくつかの方法で生活意識調査を行っており、生活者の主観的幸福感(以下、幸福感)についても毎年きいている。本稿は、幸福感に焦点をあて、それに影響を与える要因に関して考察を行う。
 ネット調査(「ライフスタイルに関するアンケート」)では、回答者の幸福感を2008年から継続して調査しており、図1にあるように、年によって、シェアで5%未満程度の動きはあるものの、基本構造の大きな変化は見られない。 「どちらかといえば幸福である」という回答を中心に、幸福よりに偏って分布している。これは、よく似た概念である、生活充足度(2005年からデータ収集)に関しても同じことがいえる。
 幸福感に関するデータは、あくまで主観による回答であり、そのあいまいさを信頼できないと評価する見方がある一方、個人の厚生水準を表す指標として、所得などと同様に重視すべきとの主張もある。本稿は幸福感のデータとしての価値を重視する立場に立つ。

幸福感に影響を与える要因

  さて、このような幸福感は、どのような理由から形成されるのであろうか。自由回答を見てみると、「家族がいる」「健康である」「経済(収入が安定している)」「平穏に暮らせている」といった、なるほどと思わせるキーワードが並んでいる。そこで12の選択肢を提示した上で、「あなたにとって、幸福感を感じるためには何が重要だと思いますか」とたずねた。結果は図2の通りである(幸福感に影響を与える要因についての、基礎的な考察に関しては、拙稿「幸福に必要な条件と年齢・性別」〈情報誌「CEL」94号所収〉で行っている)。
 自分や家族の健康が第一、よい家庭やお金がその次に求められ、人間関係に関する選択肢がその次に選ばれている。これも毎年同じ傾向を示す調査結果である。しかし、回帰分析などでは、健康であることが幸福感を高める一番の説明要因とはなっていない。健康の“欠如”は不幸を感じさせる強い原因になることは容易に想像できる。しかし、健康である場合には、それが当たり前になって、日々、それに起因する幸福感を実感できない(忘れがちになる)、いわゆる衛生要因であるからだと考えられる。
 では、データとしての幸福感の動きと関係の深い要因とは何であろうか。 CELでは、以前決定木分析を用い、「よい家庭が築けている」かどうかなどの評価が幸福感に大きく影響しているとの結論を導いた(前出稿)。そこで「図2の選択肢に対する実感と幸福感との相関係数」を計算してみると、全てが有意(意味のある)に正の関係を持っているとの結果を得た。係数の絶対値が大きいものは「よい家庭が築けている(0・533)」「自分の大切だと思っている人が幸せである(0・498)」などであった。

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