東 珠実
2012年07月10日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2012年07月10日 |
東 珠実 |
住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.101) |
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「賢い消費者」は時代とともに変わる
生活に必要なリテラシーと言えば、まず「賢い消費者」になることを考えます。「賢い消費者」の概念は、社会の変化に伴い、少しずつ変容してきました。
この言葉がしばしば使われていた高度経済成長期には、騙されない、被害に遭わない消費者が「賢い消費者」でした。また、その後の低成長期や長期的な不況が続く時期においては、これに加え、限られた収入の中で、モノやサービスを合理的、効率的に獲得・消費し、より豊かな生活を営むことができる人が「賢い消費者」でした。さらに、現在では、倫理的消費ができる、たとえば環境に配慮した消費行動をとることができる消費者を、ひとつの理想的な消費者のあるべき姿として「賢い消費者」と呼ぶことができるように思います。
ここでいう「賢い消費者」とは、2008年(平成20年)6月の「消費者行政推進会議取りまとめ」、「消費者行政推進基本計画」ならびに、『平成20年版国民生活白書』において提示された「消費者市民社会」の主体として捉えられるものでもあります。従前「消費者」は、経済性や安全性などの観点から自己の利益や生活向上のためにモノを購入・消費してきましたが、「消費者市民」は、自分や家族のためだけでなく社会問題や多様性、世界情勢、将来世代の状況などにも目を向け、持続可能な社会の形成に貢献するようなライフスタイルをとることができます。また、そのことは、巡り巡って、自分自身の生活の維持可能な発展に結びつくことから、消費者市民的な生き方を、現代版「賢い消費者」と考えることができます。
20世紀の負の遺産ともいえる環境問題をはじめ、東日本大震災以後のエネルギー問題に関連して、いま、まさに私たちの生活のあり方が問われています。多くのモノやサービスやエネルギーを使って私益と物的な豊かさを重視する生活から、省資源・省エネルギー型で共益、公益と心の豊かさを重視する生活への転換が課題となっています。