橋元 良明
2012年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2012年11月01日 |
橋元 良明 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.102) |
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―メディアと生活―
ある種のメディアは人々の生活を大きく変える。
たとえばテレビである。テレビは1953年に日本で放送が開始され、わずか8年後の61年には世帯普及率が50%を突破した。時間量的にも、NHKが「国民生活時間調査」を本格的に始めた65年で、視聴時間は日本人平均で2時間52分にも達しており、以降、今日にいたるまでコンスタントに1日3時間前後で推移している。3時間は日本人の平均的起床時間の20%、在宅起床時間の約40%にも相当する。
テレビの出現で、一気にこれだけの時間量が生活の中に占められるようになったからには、我々の心理、生活に及ぼす影響も甚大であった。実際、テレビの普及を機に、我々の「主観的現実」は急速に均質化していった。たとえば、世界情勢や世論の動向に関する知識である。アフガニスタンやシリアなど、ほとんどの日本人は行った経験がない。そのような地域でどのようなことが生じているのか、我々はメディアを通じてしか知り得ない。メディアといってもほとんどテレビからの情報である。また、消費税増税に対して、原発に対して、世間の人がどういう意見をもっているか、我々はメディアを通じてその「実態」を知り、それにあわせて自分の考えも調整していく。こうして、元々は個々人によってばらつきがあったはずの「主観的現実」が、テレビを介して似通ったものに収斂していく。
戦前には、家族バラバラにとることがありふれた風景であった食事も、テレビの前に置かれたちゃぶ台で家族一緒にとることが一般化し、テレビの番組が話題の中心になっていった。テレビのCMは欲望を喚起し、「新三種の神器(カラーテレビ、クーラー、自動車)」をはじめ、テレビによって演出された「あこがれのライフスタイル」をめざして人々は消費行動に駆り立てられ、また国民総グルメ志向、痩身志向へと導かれていった。
―テレビを脅かすインターネット―
今、そのテレビが、インターネットによってメディアの王様の地位から引きずり下ろされようとしている。
筆者の研究室では95年以降、5年おきに日本人のメディア利用行動について全国調査を実施している。調査は全国69歳以下の男女が対象で(95年は59歳以下)、無作為抽出、訪問留置法で実施し、「日記式」と呼ぶ方法で回答者に時間を記録してもらう方式をとっている。サンプル数は年によって異なるがおおむね1500人程度である。その調査結果からテレビ視聴時間の推移を年層別に示したのが図1である。なお、2012年6月にも、50歳未満を対象に日記式の全国調査を実施し(サンプル数1050)、その結果もあわせて図に示した。
テレビ視聴時間はとくに若年層での減少が著しい。10代は1995年に1日平均183・5分だったのが2012年には106・7分へと42%減少した。20代も213・8分から132・1分へと38%の減少である。