山下 宏文
2013年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2013年07月01日 |
山下 宏文 |
エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.104) |
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まえがき:次世代教育の必要性
科学技術やコンピュータの発展、グローバル化などは社会に恩恵をもたらしている。一方でそれによって生活者のライフスタイルやコミュニケーションのあり方が急激に変化し、人々が堅持するべき生きる力、言い換えれば生活力・人間力(人間として培うべき基本的な能力)が弱体化しているのではないか。現代の子どもたちが抱える課題として、「人間関係をうまく作れない」「集団生活に適応できない」「いじめやいじめの陰湿化に代表される規範意識の低下」「物事に創意をもって取り組む意欲の欠如」などを指摘する識者もいる。
これからの激動の時代を生き抜くためには、社会の多様性に対応できる「生活力・人間力」を育むことが不可欠である。特に次代を担う青年層への次世代教育がいっそう重要になってくる。
このような問題意識から本誌では生活力・人間力を育む次世代教育について検討を行っていくことにした。
はじめに――生活者にエネルギー・リテラシーが必要
エネルギー自給率4%と、他国に比べてエネルギー資源が乏しい日本にとって、エネルギー問題は常に大きな課題である。またエネルギー消費は地球温暖化問題とも不可分の関係にある。さらに、2011年3月11日に発生した東日本大震災とその後の福島原発事故、それに続く関東での大規模な計画停電と全国的な電力需給のひつ逼 ぱく迫 により、需要面では節電・省エネが強く求められるようになった。他方、制度面では電力の自由化論議がいっそう活発になっている。そのようななか、生活者が「エネルギーをいかに選択するか」という意思決定を迫られる機会が増えている。
適切な選択を行うためには「エネルギー・リテラシー(エネルギーを賢く使うための基礎知識)」を身につけることが不可欠である。10年単位でこの状況が大きく変わる可能性が高いことを考えれば、次世代教育としてのエネルギー環境教育が重要なテーマだということは明らかだ。
そこで「総合的学習としてのエネルギー環境教育」について研究し、エネルギー環境教育を推進する京都教育大学の山下宏文教授のお話をうかがいながら、この問題を考察することにした。
エネルギー環境教育の現状
現在のエネルギー環境教育はどうなっているのだろうか。これまでエネルギー環境教育は「理科」中心に行われていた。しかし、エネルギーや環境は本来、社会科的な側面が非常に大きいため、判断をするうえでは科学的な知識と社会的な視点を合わせてみていかなければならないことを山下教授は強調する。