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情報誌CEL

島村 菜津

2013年11月01日

Chapter2 スローシティの潮流

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備考

2013年11月01日

島村 菜津

住まい・生活
都市・コミュニティ

ライフスタイル
まちづくり
地域活性化

情報誌CEL (Vol.105)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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均質化する世界に、小さな町はいかなる対抗ができるのか

20世紀末のイタリア。世界各国と同様に、大都市では経済発展にともなう大規模開発と、グローバル化によってもたらされた町の均質化が進んでいた。こうした流れの中、小さな町が時間をかけて築いた魅力を守り、「スロー」な哲学を町づくりに活かすための組織「スローシティ連合」が生まれた。

スローシティ連合は、1999年、スローフード運動を生んだイタリアに、これを母体として生まれた。現在、イタリア国内に約73市町村、アメリカ、ノルウェー、韓国など世界の177市町村が加盟している。
スローな町づくりとは、いったい何を意味するのか。
母体となった「スローフード協会」は、北イタリアのブラに国際本部を持ち、国内約2万人、世界に8万人弱の会員を擁する食のNPO法人である。その当初からの会員で、当時、トスカーナ州グレーヴェ・イン・キアンティという小さな田舎町の町長だったパオロ・サトゥルニーニ氏は、1997年、ウンブリア州オルヴィエートで開かれたスローフード国際大会に参加した。古代の洞窟、バロック期の井戸、カフェや広場、町の各所に仕かけられた試食会や食と音楽の競演。憲兵隊の兵舎に世界からの700人の会員たちが肩を寄せ合い、地元の学生ボランティアがプロ顔負けのサービスをこなしたガラディナー。その見事な演出に魅せられたサトゥルニーニ氏は、帰路、興奮冷めやらぬ頭で考えた。「このスローの哲学を、町づくりにダイナミックにつなげることはできないものか」
大都市では、人口集中とともに生活環境が劣悪化し、大型店舗やファストフードの進出により、食生活だけでなく、町の様相そのものが均質化していく。しかし、自然に恵まれた小さな町まで、これに追従するのは馬鹿げてはいないか。「ならば、もはや大都市では望めない質の高い暮らし、ゆったりした時間と人間らしい大きさを保持する小さな町のネットワークが創れないものか」
こうして翌日、カンパーニャ州のポジターノ、ウンブリア州のオルヴィエート、ピエモンテ州のブラの町長らに電話をし、99年、この4町から「スローシティ連合」(Citta Slow)が正式に産声をあげた。人口5万人以下の「暮らしの質が高い」小さな町のネットワークだった。

「キアンティ砂漠」から、世界がうらやむ豊かな田舎へ
---グレーヴェ・イン・キアンティがスローを目指した背景

さかんに映画のロケ地になる、現在の美しいトスカーナ地方に足を運ぶと、それが太古から変わらぬ風景だったかのように錯覚しそうだ。確かになだらかな丘を覆う葡萄や糸杉は古代から植林されたものだ。しかし、1970年代まで、この地方に農村観光というものは存在しなかった。農村が美しいという概念は、この地の暮らしが豊かになり、風景を磨く地元の努力とともに育ってきたのである。

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