久繁 哲之介
2013年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2013年11月01日 |
久繁 哲之介 |
都市・コミュニティ |
地域活性化 |
情報誌CEL (Vol.105) |
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まちづくりは「人づくり」と「場づくり」
世界各国で受け入れられつつある「スロー」。そしてそれを背景としたまちづくり。
日本でも、歴史文化や国民性に合った「スローなまち」をつくるために、なんらかの基本となる考え方が必要だろう。
ここでは、これまでの日本のまちづくりにおいて何がスローで、何がスローではなかったのか、「言葉」と「視線」をキーワードに考察する。
「人を創る」か「場を作る」か、分けて考える
皆さんは、コミュニティの一員として、どういう時に最も「幸せを感じる」、あるいは「ストレスを感じる」でしょうか?
コミュニティが自分に向ける言葉と視線が「スローな(優しい、心地よい)」時、あるいは「ファストな(厳しい、事務的な)」時だと私は思います。
この「人として根源的な欲求」を前提に、本稿テーマ「スローなまち」を、自分に向けられる言葉と視線が「スローな(優しい、心地よい)まち」と定義して、以後は「スローなまち」と表記して話を進めます。そして、自分に向けられる言葉と視線が「スローなまち」をつくる営みを「まちづくり」と呼ぶことにします。
「スローなまち」をつくる方法は二つに大別することができます。「人を創る」方法と「場を作る」方法です。それぞれ具体的に定義して事例を挙げて説明します。
人を創るとは「誰に対しても、特に高齢者など社会的弱者に対しても、言葉と視線がスローな市民を育み、増やす」ことです。石川県七尾市を事例1として説明します。
場を作るとは「誰に対しても、特に高齢者など社会的弱者に対しても、言葉と視線がスローになれる、特別な場所を作る」ことです。成功事例として東京都豊島区の「巣鴨地蔵通り商店街」を事例2として、失敗事例として東京都足立区の「老人館」を事例3として説明します。
事例1/石川県七尾市 「おばあちゃんの溜まり場は、ミスド」と聞いて、あなたはどう思う?
石川県七尾市のJR七尾駅前に、公共施設と商業施設の複合商業ビル「パトリア」があります。パトリア1階の正面入り口横にあるミスタードーナツ(以下、ミスド)七尾店は、地元で「おばあちゃんの溜まり場」として有名です。ミスド七尾店は、地元おばあちゃん達に愛用されて、北陸地方に数あるミスド全店舗の中で、月間の売上第1位を記録したこともあります。