谷 直樹、麻生 圭子、木全 吉彦
2013年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2013年11月01日 |
谷 直樹、麻生 圭子、木全 吉彦 |
住まい・生活 |
住生活 |
情報誌CEL (Vol.105) |
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そのまちに住むことが楽しいと思える「住みごたえ」のあるまちとは、どのようなところなのでしょうか。
「大阪くらしの今昔館」館長を務め、大阪市内で長屋の保存・再生に取り組む谷直樹氏、京都の町家で美しい生活を楽しむ麻生圭子氏、CEL所長木全吉彦が自らの体験を語りながら、住みやすく魅力的なまちとスローとの関係を語り合います。
「まちに住まう」ことを体感できる博物館
木全:
本日お邪魔している、「大阪市立住まいのミュージアム 大阪くらしの今昔館」は、「まちに住まう知恵をつなぐ」というコンセプトでつくられているそうですが、近世大坂のまち並みが細部にわたって再現されているのに驚きます。特に一日や四季の変化が体験でき、時間との関わりが重視されているように感じますが、設立の背景はどのようなものだったのでしょうか。
谷:
館がオープンしたのは2001年ですが、博物館をつくろうという企画を始めたのはその10年前です。そのさらに2年前に『まちに住まう---大阪都市住宅史』(平凡社)という本を大阪市の住宅政策課と一緒に編集・刊行したのですが、そのころは、都市居住というのはあまりメジャーなことではありませんでした。1973年のお正月に「住宅すごろく」というのが朝日新聞に掲載されたんですが、そのすごろくの上がりは「庭付き郊外一戸建て住宅」になっています。太陽と自然の恵みのなかで住むというのが理想でした。1980年代あたりの大阪市内も、住む場所というよりは通ってくる場所という感覚でした。しかし、歴史を掘り起こしていくと、まちにとって「住む」というキーワードがいかに大きいかがわかってきました。ひとが住んでこそ、まちの魅力が高まるということが見えてきた。それで、『まちに住まう』を企画した頃から、まちの再生のキーワードは「住む」なのではないかと思うようになりました。昔はまちが汚いって言われましたけれど、あれは、住んでいないからなんです。まちを「使う場所」としてしか見ていないから。
木全:
「住む」という要素がなくなっていくことで、まちがすさんでいくわけですね。
谷:
そういうことです。本を出した次の段階として、皆さんにもまちに「住む」ことの重要性を体感していただこうと思って、博物館をつくったんです。頭で理解するだけではなくて、体で感じるところが欲しいなと。大阪は、戦災や戦後の再開発で、昔ながらの建物がほとんど消滅してしまっている。そこで、博物館をつくって、大阪のまちの原点を子どもの頃から体験し、まちへの愛着や、どういうものを引き継いでいったらいいのかということを理解してもらおうと思いました。