荒 昌史
2014年03月03日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2014年03月03日 |
荒 昌史 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.106) |
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ネイバーフッドデザイン
2011年の東日本大震災は、コミュニティの欠如による現代社会の危険性を浮き彫りにした。しかし、しがらみの多いかつての「ご近所付き合い」をすることにも抵抗は大きい。しがらみにもならず、孤独にもならない、ちょうどよい近所のつながりをつくるための事業「ネイバーフッド(近隣)デザイン」が始まっている。
プライバシーとパブリック、両方が尊重されるマンションを
集合住宅や街区における「近所付き合い」の新しい形を提案しているのが、HITOTOWA INC.(HI TOTOWAは「人と和」の意)の荒昌史さんだ。それは古きよき「ご近所」へのノスタルジーではない。荒さんが提唱するのは、新たな関係性の構築を目指す「ネイバーフッドデザイン」である。「しがらみではない、でも孤独にもならない。そんな適度なつながりをつくる(=デザインする)仕事だと思っています」
HITOTOWA INC.の事業は、コミュニティづくりを意識した物件の開発や、管理のあり方の見直しといったコンサルティングが中心である。2013年に完成した集合住宅「A-standard」は、エントランス近くに居心地のよい、「ちょっと立ち寄りたくなるような」共同スペースを配した。そこで防災や子育てなどをテーマに、たびたびワークショップやイベントを開催し、住民同士の自然な交流を促す。販促用のパンフレットでも「good neighbors(よき隣人)になるためのきっかけづくりをお手伝いします」と謳った。プライバシー重視というイメージのある分譲マンションでは、異例の試みといえるかもしれない。
「プライバシーとパブリックの両方が尊重されている。どっちかではない、ということが重要だと思います。また、マンションのなかだけの閉鎖的な関係ではなく、街づくりやお祭りなどを行うNPOからも人を呼ぶなど、建物の外へもチャンネルを広げていく工夫をしています」
近所付き合いの本質は、課題の解決にある
最近は、シェアハウスやソーシャルアパートメントなど、若い世代を中心に、個を重視しながらも、住まいに他者とのつながりを求めるニーズが高まっている。また、共通の趣味をテーマにす据えた物件もある。けれども、荒さんの意図は少し違うところにあるようだ。