國領 二郎
2014年03月03日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
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2014年03月03日 |
國領 二郎 |
住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.106) |
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つながる経済とどう歩むか
つながる経済
スマートフォンに代表されるモバイルコンピューティングと、クラウドと呼ばれるネットワーク上に展開されたデータベースやサービスによって、あらゆる情報が結合される時代が到来しつつある。IT用語では分かりにくいので、もっと生活シーンに沿って例示してみよう。たった今、この原稿を書きながらスマートフォンに「ラーメンが食べたい」と問いかけてみた。するとただちに「現在地の周辺でラーメン店を17件調べました」と音声で返事があり、各店の口コミ評価つきの情報が表示された。よさそうなお店をタップすると地図が表示され、現在地からのナビゲートをするかと問いかけてくる。このようなことが可能なのは、情報が基本的にネットワーク上に構築されたプラットフォーム上に格納され、消費者の手もとにある、高機能の情報デバイスが常時接続されているからである。そして、GPSを搭載したデバイス側から、位置情報と持ち主の希望が伝えられると、プラットフォーム側で、地図情報や店舗情報などが、ユーザーにニーズに応じて結合されて提供される。
いま一つ例示するなら、ここへきて急速に普及を始めている電子書籍は、利用者がどの本を買って、何ページまで読み進めたかを把握している。これによって、新しい端末に乗り換えても過去に買った本がいつでも読めるし、たとえば家の大型画面で読んだ本の続きを、画面を閉じて電車に乗り、スマートフォンで表示するといった便利なサービスを提供してくれる。こちらでは、個々の読者の読書履歴を深く記録するほか、多数の読者の履歴を横断的に分析することで、本がどのように読まれ、どんな読者がどのような本を好むかが分析されマーケティングに活用されている。
顕名経済
このような情報を介してさまざまなサービスが「つながる」経済には従来の経済システムと大きく異なる側面がいくつかあるが、一番大きいのは「顕名経済化」であると考えている。
顕名化の意味を考えるためには、まず、近代における匿名経済化について理解しておく必要がある。19世紀後半以来、20世紀を通して発達してきた大衆消費社会は、基本的に匿名取引を前提としてきた。