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情報誌CEL

大澤 真幸

2014年03月03日

ソーシャルメディアは、ほんとうにソーシャルか?

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2014年03月03日

大澤 真幸

住まい・生活
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情報誌CEL (Vol.106)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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公共性の残余をめぐる考察

「ソーシャル」とは何か。ここで「ソーシャル」というのは、ソーシャルネットワークというときのソーシャルである。この意味での「ソーシャル」は、ほんとうの〈ソーシャル〉か。これが問いたい疑問である。ただし、このような問いが成り立つためには、〈ソーシャル〉ということで、私が何を意味しているのか、明示しておかなくてはならない。その点は、すぐ後で述べるが、その前に、いささか興味深い、世界観の対立を見ておきたい。
昨2013年、日本の思想界では、ほぼ年齢の等しいふたりの若手の、つまり30歳代の若い論客の著書が大きな話題になった。鈴木健の『なめらかな社会とその敵』(勁草書房)と千葉雅也の『動きすぎてはいけない』(河出書房新社)である。ソーシャルメディアを主題にしているわけではない、これら哲学的・理論的な著作に、今ここで注目することにはもちろん理由がある。両者がともに、ウェブ、とりわけソーシャルメディアにおける体験から、インスピレーションを得ながら書いていることが、明らかだからだ。つまり、二つの著作は、インターネットを積極的に活用している若い世代の、「ソーシャル」な体験を、哲学的・思想的に昇華した表現であると解釈することができるのだ。注目すべきは、ふたりの結論が互いにまったく反対を向いていることである。
鈴木健の著作は、「なめらかな社会」を実現するためには、どのような制度を設計したらよいのか、その基本を大胆に提案している。その制度の中には、独特な貨幣のシステムや、斬新な民主主義の手法が含まれる。鈴木の著作の方が、千葉のそれよりも、インターネットやソーシャルメディアとの関係は強い。思い切って単純化して言ってしまえば、鈴木がめざしているのは、ウェブ上のネットワークを、現実の世界に転換させたような社会である。そのような社会を、彼は「なめらかな社会」と呼ぶ。なめらかな社会とは、壁のない社会、人々がなめらかにどこまでもつながっている社会である。ウェブに国境や壁がないように、である。恣意的に壁が設定されると、われわれは、壁の向こう側の人をとりたてて憎んでいるわけでもないのに、その人たちとつながることができなくなる。

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