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情報誌CEL

古家 信平

2014年07月01日

海に生かされる人々 伝承や民間信仰に見る、日本人の海へのまなざし

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2014年07月01日

古家 信平

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情報誌CEL (Vol.107)

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日本人の心の底には、海に対する畏敬の念や感謝の気持ちが流れているのではないだろうか。各地に残る伝承や民間儀礼から、海からもたらされる恵みに、私たちがいかに感謝し、信仰心を寄せていたのかを探る。

海女に見る海の世界――竜宮の使いとしての鮫

三重県の鳥羽、志摩には現在1000人ほどの海女が活躍し、素潜りでサザエやアワビを採集して生業としている。ここ20年でその数は半減したといわれているが、それでも日本各地に見られる海女の総数の半分がこの地域に展開している。私は昨年、70人ほどの海女がいる志摩市志摩町和具で早朝から船に乗り、漁をする様子を間近に見る機会があった。1隻の船に船頭が1人と12人の海女が相乗りして沖に向かうことになった。
ほとんどが60歳前後かそれ以上の女性であったが、若いころから潜っていたとしても一人前になるにはかなりの経験が必要である。毎年の出漁シーズンが終わるころに貯金通帳を眺めるのが楽しみというほどになるまでには、10年くらいは必要らしいので、同乗した彼女らはベテランぞろいということになる。
海女が持つ手ぬぐいには、ひと筆書きで書いた星の形が黒糸で縫い付けてある。これは「セーマン」といって陰陽師・安倍清明に由来するともいわれ、ひと筆で書くのではじめも終わりもないため魔物が入ってこられないという安全祈願のまじないである。船が突堤を出て間もなく、彼女たちは沖合にある大島に向かい拝む。ここには年に一度海女が当日の朝とれたアワビやサザエを供え、市杵島姫命を迎えて祭り、豊漁と安全を祈っている。
この地域の海女は夏の土用のころ漁を休んで、伊勢神宮の別宮の伊雑宮や鳥羽市の青峰山正福寺を参拝する。
伊雑宮には毎年旧暦6月24日に7匹の鮫がお参りに来ていたけれど、そのうちの1匹を漁師が殺してしまい、怒った鮫がこの漁師をかみ殺してしまった。その後は残った6匹の鮫がお参りに来るので、この日に海女は漁を休み伊雑宮にお参りをするという。鮫は竜宮の使いとも言われている。

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