秋山 弘子
2014年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2014年07月01日 |
秋山 弘子 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.107) |
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少子高齢化、グローバル化、情報化など、社会を取り巻く環境が変化している。本連載では社会の様々な問題に立ち向かう生活者が身に付けておくべきリテラシーとは何かについて、有識者へのインタビューを通じて探っていく。初回は「ジェロントロジー(老年学)」がテーマ。私たちが初めて直面する、都市での高齢者の大幅な増加。これに対して、東京大学 秋山弘子特任教授は、「選択の特典を持つ生活者の出現」として前向きにとらえていこうと提案する。
進む都市の高齢化
日本社会の高齢化現象はよく知られているが、これまでの常識と異なるのは今後、都市部でそれが進むということである。1960年代から70年代にかけて農村部の若者が都市部に移住した。その結果、地方の高齢化、過疎化が進んだ。その時移住してきた人たちが今、都市で定年を迎えつつある。これからは「まちでの生き方」が高齢者にとって大きな問題になる。
都会で働き、寝るためだけに帰っていたベッドタウンには知っている人がいない。定年を迎えた人にとって、つながりの作り方がわからないのである。それでも1割程度の人はボランティアや生涯学習などに参加し、現役時より忙しくなる。しかし残りの9割はテレビ、犬の散歩、たまにジムといった生活を送ることになる。すると脳も筋力も早く衰えてしまう。
余生からセカンド・ライフへ
20世紀半ばまで、人生が50年、60年であった頃には定年後は「余生」であり、お迎えを待つというのが当たり前の人生であった。しかし、今は人生90年とほぼ倍になっている。「余生」ではなく「セカンド・ライフ」なのだ。重要なのは、セカンド・ライフを設計していかなければならない「初めての世代」を日本が迎えたという事実である。そこにはお手本にするべきモデルがない。 では、どうすればよいのか。「働く」「学ぶ」「遊ぶ」「休む」の4つのバランスをとることだと考えればよい。人生も後半戦になると多様でばらつきが大きくなる。家族の介護に直面している人もいれば、元気で仕事を続けている人もいる。様々な環境のもとで4つのバランスを考えること、これを「特権」だと前向きにとらえるべきだ。高齢者の多くはある程度のお金を持ち、時間もある、まだまだ健康、知人も多い。