木全 吉彦
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2014年07月01日 |
木全 吉彦
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.107) |
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今回の特集では「海の恵み」を取り上げました。
ユーラシア大陸の東の沖に、南北3000?にわたって大小7000近い島々が連なる島国日本は、1万5000以上の山(日本山岳会HPより)が国土の3分の2をおおう山の国。そして豊富な降水が森林や田畑を潤し、河川・地下水を保持する水の国です。
山から流れ出る川は2万本超(一級+二級:平成25年国土交通省統計)。途中、窒素やリンなどの栄養塩を取り込んで海へ注ぎ、食物連鎖の起点となる植物プランクトンを養います。さらに列島を包むように流れる黒潮、親潮などの海流や、緑の小島を浮かべる内海が豊富で多様な水産資源を形成しています。
山と海、その間をつなぐ川によって作り上げられたのが日本。その自然の恵みを享けて育まれたのが日本人の暮らしと言えるのではないでしょうか。山紫水明、白砂青松の美しい風景は、幕末、鎖国が解かれて初めて日本を訪れた欧米人の目を大いに楽しませたことでしょう。
しかし、時代が下って狭い国土に多くの人間が住み、活発な経済活動によって生活水準が上がるにつれ、その基盤は脆弱になっています。経済のグローバル化によって辛うじて需給バランスは保たれているものの、エネルギー自給率4%、食料自給率40%という現状は決して放置できるものではありません。
世界6位の広さを誇る日本の海(排他的経済水域)は、水産物の供給源としてのみならず、洋上風力や潮汐力、海水温度差発電などのエネルギー資源、熱水鉱床などの鉱物資源、海浜リゾート、クルーズなどの観光資源と、多面的に利用できる純国産資源です。
レジャーが多様化するなか、海水浴や釣りを楽しむ人が減り、子どもたちが魚を食べなくなるなど、最近、「海が遠くなった」という話をよく聞きますが、1年で最も海が近くなるこの季節、生命を生み、育む「海」に思いをはせたいものです。
「私の耳は貝のから 海の響をなつかしむ」 (ジャン・コクトー『耳』堀口大學訳)