豊田 尚吾
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2014年11月01日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.108) |
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環境や相互扶助など社会のあり方に配慮し消費活動を行う、新しい価値観として注目されるキーワード「エシカル」。
「エシカル」を軸に生活することで、個人がよりよい生き方を実現し、成熟した社会になるのではないか――。
6000人を対象としたネット調査結果から、エシカルな生活者の実像を探る。
日本エシカル推進協議会設立
本年5月30日、日本エシカル推進協議会が発足した。エシカルを訳せば「倫理的」であり、実際道徳の規範となる原理を意味している。しかし、この説明はわかりにくく、人によっては押しつけがましい言葉として受け取られることもある。したがって筆者は通常、倫理を「社会の持続可能性を維持するために必要なルール」だと説明している。
日本エシカル推進協議会の設立趣意書では「地球の環境と社会のあり方を新しい概念であり、価値観でもある『エシカル』(倫理、良心)をキーワードに洗い直し、塗り替えて、地球の環境と社会が共生し、融け合える不滅の共生文明圏を再構築していくこと」を目的とするとうたっている。具体的な活動例として、地球環境や人権を意識した資材購買・調達などを実現するための「エシカル購入ガイドライン」の検討がある。また2020年開催予定の東京オリンピック&パラリンピックを、人と環境にやさしいエシカルな催しである「エシカル・オリンピック&パラリンピック」にしていこうという活動もある。加えて、それを契機に東京をエシカルタウン化し、日本全国に波及させていくことも提案している。他にもエシカル度評価法の確立やエシカルファッション賞といった包括的な振興策などが例示されている。代表は山本良一東京大学名誉教授、筆者も本協議会設立発起人114人のなかのひとりである。
かつて情報誌『CEL』では第98号(2012年1月発行)で「倫理的消費―持続可能な社会へのアクション」という特集を組み、筆者も「ウェルビーイング実現のための倫理的消費に」を寄稿している(ちなみに、そこでは倫理的消費の定義を「社会を構成する人々が共存するためのルールに即した消費」としている)。
このようなことも含め近年、エネルギー・環境制約の問題、人権やダイバーシティ(人の多様性)に対する意識の向上、社会の参加者としての責任意識の高まりなどにより、互酬性や相互依存関係の効用、他者配慮の重要性が少しずつ世の中に認められつつあるように感じている。